作品目録

狂おしい月星

感謝知らずの男シリーズ

初出誌
「プチフラワー」1992年3月号(1992.3.1) p7~92(86p)
登場人物
オリヴィエ(レヴィ):ローレンス・ロイヤル・バレエ団の新人ダンサー。
アーチボルト・ジョンソン(アーチー):カメラマンの卵。
ガブリエラ:アーチーの恋人。
ミツグ:レヴィと同期のダンサー。
カーク:レヴィと同期のダンサー。
ショーン:レヴィの兄。
ドーラ:ショーンの入院しているクリニックの看護婦。
シグ:レヴィの友人。元はショーンの友人。
エリカ:カークの恋人。
セシル・アンデルセン:舞台を中心としてベテランの女性カメラマン。

あらすじ
レヴィは18歳でバレエスクールを卒業し、ロンドンのローレンス・ロイヤル・バレエ団に入団した。8月の舞台「真夏の夜の夢」ではモブの一人として踊ったレヴィに「ユリイカ」という差出人から花が届いた。早速ファンがついたと思ったが、ある日後ろをつけてくる男を問いただすと、それが「ユリイカ」だった。彼は美術大学に通うカメラマンの卵で、踊るレヴィと波長が合ったから、写真を撮らせて欲しいという。
レヴィは踊っているときにアーチーが写真を撮ると、目線を感じ、何か波長が合った感覚がする。アーチーはプロのカメラマンになって、現実感のないこの世界とつながっていたいと願っている。一方、レヴィはバレエだけがまだ生きている世界で、踊ることでしか世界と共鳴できないと感じている。そうしてカメラを通し、アーチーとレヴィは共鳴する。
アーチーが撮影したレヴィの写真が写真誌で一席をとる。アーチーとレヴィは気が合って、お互いの部屋を行き来し、バレエや写真は子供の頃の話をするようになる。アーチーは個展を開くことになり、そこでレヴィはアーチーの彼女というガブリエラを紹介される。
さらに、アーチーは大手のリンカーン出版社から写真集を出すことになった。出版社のパーティでレヴィはアーチーとケンカしたが、レヴィがモデルになった写真集は売れた。あっという間に忙しくなったアーチーとは次第に連絡も間遠になって行った。
ある日、レヴィにガブリエラから電話があって合うと、どうやらアーチーとは別れたらしい。まもなくニューヨークへ留学すると話すとガブリエラは一緒に連れて行って欲しいと言われる。アーチーへの不満や怒りや恋しさが爆発して、ガブリエラを連れて行ってしまう。ところがニューヨークでレヴィがレッスンを受けている間、ガブリエラはすることがなく、いつの間にか帰国してしまう。
1年後、レヴィはロンドンに帰って来た。ニューヨーク留学中にモダンをやりたい気持ちが強くなっていたレヴィはパリのアルファ・バレエの監督に誘われていたこともあり、パリに移ることにする。そんな折り、アーチーから連絡があって再開する。またレヴィを撮ってみたいと言われ、ガブリエラのことで少し後ろめたい思いもしていたせいか、簡単に了解してしまう。
パリでレヴィは100%自分を出せる作品と出会い、もっと踊りたいと感じるようになる。アーチーは撮影に来るが、以前のようなテレパシーを感じない。一方で、セシル・アンデルセンというベテランの女性カメラマンにはテレパシーを感じた。
アーチーにニースに行かないかと誘われたレヴィは一週間のバカンスを過ごすことにする。そこで起きた出来事がレヴィを決定的にアーチーから引き裂くことになるのだが…。
コメント
「感謝知らずの男」「オオカミと三匹の子ブタ」に続く、感謝知らずの男シリーズの第三弾です。時系列としては一番早い時期のものになります。まだペイペイのレヴィの初々しい姿を見ることが出来ます。18歳から21歳頃までのレヴィで、パリのモダンで名をあげ始めた頃までが描かれています。
最後に、シグがまとめていますが、レヴィに限らず、芸術家はみんな夢を語る人、ロマンチストに弱いのです。レヴィの場合は、慎重で用心深いところがあるにもかかわらず、センチな夢を一緒に見る人を探しています。レヴィは自分のことは、こつこつとキャリアを組み立て、留学したりして新しいことを試み、何より熱心に練習をしているのに、口先ばかりでキャリア不足のアーチーなんかの夢にあっという間に同調してしまうのが、シグではないのですがおかしいなと思います。
ミツグはロンドンのローレンス・ロイヤル・バレエ団、ニューヨークのパーク・バレエ団、パリのアルファ・バレエ団とずっと一緒なんですね。最後のドミ・ド・リール・バレエ団にはいないようですが。
そして、実はシグという人物が、マッチョなので最初は気付きませんでしたが、顔が「ミロンの系譜」というべきか、あるいは「アマゾン」「グランパ」の系譜というべきか、ともあれ、あの流れの人でした。ポジション的にも同じ感じですね。
さて、一応これで「フラワー・フェスティバル」で始まった一連のバレエシリーズは終わります。「ローマへの道」のようなシリアスなものから「海賊と姫君」「ジュリエットの恋人」といった恋愛もの、「感謝知らずの男」といったユーモアのある人間模様まで、様々な作品がありました。全体的には、読みやすくとっつきやすい作品が多かったのではないでしょうか。機会があれば是非全部読んで欲しいです。

2010.7.27

収録書籍
感謝知らずの男

感謝知らずの男(プチフラワーコミックス)小学館 1992.8

感謝知らずの男


感謝知らずの男 小学館叢書 1996.6.28

感謝知らずの男

感謝知らずの男 小学館文庫 2000.9.10

カタルシス

イグアナの娘