作品目録

感謝知らずの男

 

初出誌
「プチフラワー」1991年5月号~7月号 64p
Part1:1991年5月号(1991.5.1) p221~252(32p)
Part2:「プチフラワー」1991年7月号(1991.7.1) p121~152(32p)
登場人物
オリヴィエ(レヴィ):バレエ・ダンサー。
ショーン:レヴィの兄。
ドーラ:ショーンの入院しているクリニックの看護婦。
モリス:同じアパート間借り人。音楽を学ぶ学生。
ミリー:モリスの恋人。声楽を学ぶ学生。
ミツグ:レヴィと同じバレエ団の団員。
シグ:レヴィの友人。
あらすじ
バレエ・ダンサーのレヴィはアパートの階下の騒音が原因で不眠症。防音設備のある部屋へ引っ越したが、同じアパートに住む音楽学生が世話を焼きたがり、何かと接触して来る。その上、その彼女も加わって、意図せず、三角関係に巻き込まれてしまう…。
コメント
「ローマの道」で主人公マリオの先輩にあたるレヴィがここでは主人公です。「オオカミと三匹の子ブタ」「狂おしい月星」と合わせて「感謝知らずの男」は3部作です。この作品はその第1作目です。
まぁ、ちょっとレヴィも極端に神経質で無愛想なところがあるかもしれませんが、むしろこのモリスとミリーの二人に感心してしまいます。こんなに押しつけがましい人って、私は出会ったことがないのですが、きっと今でもどこかにいるんでしょうね。受け取り方の問題もあるのかもしれませんが、どう見てもただうるさい人たちで、邪険にしたことをレヴィが「僕は親切に値しない人間なんだ」などと反省する必要があるようには思えません。この二人に対する著者の皮肉な視線を感じます。
モリスの親切が問題なのは「親切にすると気持ちいい」自己満足と「こうしてやったんだから、こうしてくれて当然」という見返りの両方が見えるからです。レヴィに対し、人前に出た方が良いとか、もっとたくさん食べた方が良いとか、外の連れ出したり、食べさせたりしたことは決して間違っていません。それに多少押しつけがましいくらいで良いときもあると思います。が、モリスの場合は単なる価値観の押しつけになってしまっていて、自分のやっていることにつゆほどの疑問を持たないところです。かといって、「押しつけがましいかな」と遠慮ばかりしていたら他人との関係は築けません。時と場合によって「多少図々しいくらい」「少し引いてみるくらい」というバランスを上手にとる人が世の中にはいて、すごいなと思うばかりです。
ドーラっていい女だなというレヴィの感覚は私もよくわかります。特に看護婦さんや介護士さんで太った人を見ると、ほっとします。別にぬいぐるみがいいというわけではなく、人に安心感を与えますよね。白い制服で清潔感もあるからいいのです。ただ単に太っていて不衛生な感じだったら、あるいは派手な服を着ていたら、そんな印象を人に与えないでしょう。

2010.7.26

収録書籍
感謝知らずの男

感謝知らずの男(プチフラワーコミックス)小学館 1992.8

感謝知らずの男


感謝知らずの男 小学館叢書 1996.7

感謝知らずの男

感謝知らずの男 小学館文庫 2000.9.10

ジュリエットの恋人

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