作品目録

海賊と姫君

 

初出誌
「プチフラワー」1989年9月号(1989.9.1) p7~56(50p)
登場人物
ローズマリィ・ハート:20歳。ロンドン出身でニューヨークでモダンをやっていたダンサー。
オリバー・モロー:29歳。自称パリのNo.1ダンサー。クラシック。
ピーター:以前N.Y.でローズマリィと同じバレエ団にいた。
パール:39歳。以前オリバーとつきあっていた。
ミカヤ・ローレーン:3年前までローズマリィのパートナーだったダンサー。現在はチューリヒにいる。
フォーン:ミカヤの妻。元ダンサー。
あらすじ
パリのアルファ・バレエ団はモダンもクラシックも演じる。ニューヨークからローズマリィがアルファ・バレエ団と契約するためにやってきた。ちょうど「海賊」の公演が行われる直前だった。メドゥーラを演じるパールがけがをしてしまったため、急遽ローズマリィが抜擢された。指名したのはコンラッドを演じるオリバー。ローズマリィはモダンのダンサーのはずだが、クラシックである海賊のメドゥーラを一発で完璧に踊ることが出来た。
公演の後、オリバーはローズマリィの部屋へ行き、二人の交際が始まる。オリバーの部屋へローズマリィがやって来ると、5年前にローズマリィがミカヤ・ローレーンと演じた「海賊」の写真が貼ってあった。オリバーはローズマリィを知っていて、一緒に「海賊」を踊ってみたかった、と語る。
ところが、ローズマリィはオリバーにミカヤが忘れらない。「いつも淋しくて、最初は好きになるがそれは間違いだったと気付く」と別れを申し出る。ローズマリィはミカヤが去ったことで、人が信じられなくなっている。オリバーはミカヤに一緒に会いに行こうと言うが…。
コメント
「海賊」は1856年1月23日パリ・オペラ座初演の由緒正しいクラシック・バレエで、海賊を救ったギリシャの娘メドゥーラと海賊の首領コンラッドの恋物語、3幕ものです。
萩尾先生の作品に男女の恋愛がメインにくるものは現在に至るまで少ないと思います。直接的すぎて生々し過ぎるから、と「トーマの心臓」を男どうしで描いただけのこともあり、恋愛オンリーの作品は希というか、ないに等しい。ところが、このバレエシリーズにはバレエというフィルタを通していますが、男女の恋愛の話がメインという作品があります。
「海賊と姫君」「ジュリエットの恋人」がそれにあたります。「海賊と姫君」は最初からオリバーはローズマリィに恋をしています。ローズマリィは昔の恋人(=バレエのパートナー)が忘れられません。しかも親友と結婚するという最悪の形での失恋により、男性を信じられなくなって、2週間以上誰とも続かないような状況に陥っています。しかし、当時ローズマリィが幼なすぎて相手を理想化しすぎてしまい、それが相手にとってはプレッシャーになっていたことがわかります。
その理想化した相手を忘れられないということは、ずっと幼い恋の中に閉じこもっているままだということ。それを破壊するには強烈な自負心のある男性が出てこないとダメです。オリバーに出会えて、ローズマリィはよかったなと思います。
「ジュリエットの恋人」で、オリバーはローズマリィと結婚していることがわかります。が、客演でローズマリィが留守にしている隙に、ほかの女性ダンサーとデートしてしまうあたり相変わらずですが、良いキャラクターです。裸にバスタオルというみっともない格好で必死でローズマリィを追いかける姿は、むしろ「カッコイイ」です。

2010.7.20

収録書籍
青い鳥―ブルーバード(プチフラワーコミックス84)

青い鳥―ブルーバード(プチフラワーコミックス)小学館 1991.5

感謝知らずの男


感謝知らずの男 小学館叢書 1996.7

感謝知らずの男

感謝知らずの男 小学館文庫 2000.9.10

海のアリア

青い鳥