作品目録

青い鳥 ブルーバード

 

初出誌
「プチフラワー」1989年11月号(1989.11.1) p251~300(50p)
登場人物
アシュア:パリ・マリ・バレエ団のダンサー。22歳。
ヤン・ラファティ:同じバレエ団のダンサー。17歳。
チャーミアン:同じバレエ団のダンサーでアシュアの元彼女。22歳。
カントク:パリ・マリ・バレエ団のの主催者。
スキピオ:スイスのローザンヌにあるモダン・バレエ団の主催者。
ステラ:スキピオの奥さん。
グローリア女史:ニューヨークの一流演出家。
あらすじ
アシュアはパリ・マリ・バレエ団に所属する典型的な王子様タイプのバレエ・ダンサー。「眠れる森の美女」の青い鳥(ブルーバード)訳はアシュアの十八番だ。それを新人のガラ・コンサートでヤンに踊られてしまった。しかも相手役のチャーミアンはアシュアの恋人だ。コンサートの翌日、チャーミアンはヤンと暮らすと言い出した。12歳のとき父が死に、母は香港に帰り、パリにいる叔父さんの家に引き取られたというヤンに同情したらしい。チャーミアンとのつきあいはもう4年ごしでマンネリ化していたことから、アシュアも強く引き留めはしなかったが、青い鳥の役も彼女もヤンにとられたアシュアはおもしろくない。
パリ・マリ・バレエ団の12月公演は「くるみ割人形」。アシュアは当然のように王子役をもらうが、ヤンは中国のお茶の踊りを監督がオリジナルで振り付けて踊ることになった。ところがアシュアは公演2週間前に足をくじいてしまった。公演ができるかどうかというピンチにスイスのスキピオ・バレエ団からソリストをゲストに呼ぶことが出来た。実力派のゲストのおかげで公演は大成功。ヤンが青い鳥になって幸運を運んできたと喜び、次の公演はヤンを主役にして「火の鳥」をやると監督が息巻く。
ところが、スキピオ・バレエ団のスキピオ本人がやって来て、ヤンを誘う。スキピオのバレエ団はヨーロッパのモダンでは3本の指に入る大きいバレエ団だ。アシュアに引き留めて欲しそうなヤンだったが、アシュアはこれでやっかいばらいが出来ると思い、チャンスだからと送り出す。監督はひどく落胆する。
ヤンが去った後、青い鳥をのびのび演じるアシュア。おまけにチャーミアンも帰ってきた。ところが1ヶ月後、監督が急性心不全で亡くなってしまう。パリ・マリ・バレエ団は監督の私設バレエ団だったから、解散するしかない。青い鳥が行ってしまったためだとみんな思う。
ところが、スキピオ・バレエ団から合併の申し込みがあった。パリ・マリ・バレエ団の団員の半数は移った。アシュアとチャーミアンも移り、二人でローザンヌにアパートを借りた。再びヤンと一緒になったが、スタジオが違うせいか、なかなか会う機会はなかった。しばらくすると、スキピオがヤンとアシュア、チャーミアンの3人でアンデルセンの童話「夜鳴鶯(ナイチンゲール)」で30分ほどの新作を作りたいと言って来た。ヤンが夜鳴鶯、アシュアが皇帝、チャーミアンが黄金のオルゴールの鳥を演じる。
3人で「夜鳴鶯」の練習をしていると、スキピオの妻のステラが怒鳴り込んできた。ヤンがステラからスキピオを奪ったらしい。ヤンは親切にされるとすぐになついてしまい、対人関係の距離の取り方が下手で周囲に迷惑をかけると自分を分析する。スキピオはヤンと新しいアパートを借りて暮らし始める。
アシュアはヤンと互角に踊りたいという欲から「夜鳴鶯」に夢中になり、次第にチャーミアンを放っておくようになる。「夜鳴鶯」の公演は大成功。パーティにはニューヨークから話題の一流演出家グローリア女史がやって来た。そんな盛り上がりをよそに、チャーミアンが自殺を図った。アシュアは自分のせいだと自分を責める。
ヤンがスキピオ・バレエ団をやめて、ニューヨークに行くと言い出した。いつも親切にしてくれた人をおいて、他の人について行くヤンの行動をアシュアは責めるが、ヤンが本当に求めていたものは、アシュアには予想外のものだった…。
コメント
なにもかもなくして
希望がなくても
世界が不条理でも
舞台だけは美しかった
舞台にだけは青い鳥が住んでいた。
「誰も誰かの青い鳥にはなれない」と最後にアシュアは言います。舞台の中にだけ永遠がある、と。ヤンは誰の青い鳥にもなれなかったし、アシュアはヤンの青い鳥ではなかった、というせつない物語です。

2010.7.21

収録書籍
青い鳥―ブルーバード(プチフラワーコミックス84)

青い鳥―ブルーバード(プチフラワーコミックス)小学館 1991.5

感謝知らずの男


感謝知らずの男 小学館叢書 1996.7

ローマへの道


ローマへの道 小学館文庫 2000.9.10

珠玉の名作アンソロジー 2 出会いと別離

珠玉の名作アンソロジー 2  小学館文庫 2009.12.20

海賊と姫君

ローマへの道