作品目録

海のアリア

 

初出誌
「ASUKA」1989年8月号~1991年5月号
第 1話 嵐(テンペスト):1989年8月号(1989.8.1) p71~121(51p)
第 2話 水上の音楽:1989年10月号(1989.10.1) p103~143(40p)(※扉裏広告)
第 3話 不協和音:1989年12月号(1989.12.1) p147~187(40p)(※扉裏広告)
第 4話 めざめよと夜を守るものの声は呼ぶ:1990年2月号(1990.2.1) p117~157(40p)(※扉裏広告)
第 5話 プレイヤー:1990年4月号(1990.4.1) p235~275(40p)(※扉裏広告)
第 6話 ベリンモン:1990年5月号(1990.5.1) p361~393(32p)(※扉裏広告)
第 7話 世界征服友の会:1990年6月号(1990.6.1) p351~383(32p)(※扉裏広告)
第 8話 地球防衛友の会:1990年7月号(1990.7.1) p229~261(32p)(※扉裏広告)
第 9話 ひとさらい:1990年8月号(1990.8.1) p343~375(32p)(※扉裏広告)
第10話 奥秩父の決闘I:1990年9月号(1990.9.1) p387~419(32p)(※扉裏広告)
第11話 奥秩父の決闘II:1990年10月号(1990.10.1) p465~497(32p)(※扉裏広告)
第12話 美少女:1990年12月号(1990.12.1) p369~401(32p)(※扉裏広告)
第13話 ダリダン:1991年 1月号(1991. 1.1) p305~337(32p)(※扉裏広告)
第14話 封印:1991年 2月号(1991. 2.1) p347~379(32p)(※扉裏広告)
第15話 ダリダン殺し?:1991年 3月号(1991. 3.1) p433~465(32p)(※扉裏広告)
第16話 ナイト・メアの夜:1991年 4月号(1991. 4.1) p443~475(32p)(※扉裏広告)
最終話 レクイエム:1991年 5月号(1991. 5.1) p559~598(32p)
登場人物
音羽アベル:聖シモン学院の生徒。波動生命体のベリンモンが入り込んでしまった。
音羽コリン:アベルの双子の弟。
音羽父:アベルとコリンの父親。
音羽母:アベルとコリンの母親。外国人。
十里(じゅり):アベルとコリンの幼稚園時代からの友人。聖シモン学院の生徒。
近衛乱:アベルとコリンの友人。聖シモン学院の生徒。
花敷日奈:近衛乱の彼女。聖シモン学院の生徒。
マリサ:沖縄のリゾートホテルのバーの歌手。
馬天(まてん):マリサのバンド仲間。
ミナト:マリサの以前の恋人。
近衛勝(しょう):EMMレコードの社員。乱の兄。
有亜土・ディデキャンド(アリアド):聖シモン学院の教師。感覚音楽の演奏家。
関根:聖シモン学院の教師。保健の担当。
ナオミ:十里のいとこ。宇宙人ウェルカム同好会の会員。
九十九(つづら):聖シモン学院の3年生。宇宙人ウェルカム同好会の会員。
仁木次郎(ニキ):聖シモン学院の生徒。銀河共同体12区担当の保安部調査員。
ポポル:音楽協会の委員。パン音楽大学の校長。
ポポス:音楽協会の委員。パン音楽大学の理事長。
ティティ:音楽協会の委員。
リリド:ダリダンの妹。
ダリダン:アリアドの大学時代の友人。
あらすじ
逗子に住むアベルとコリンの双子の兄弟は友人の十里と乱と共に曇天だったがヨットを出した。すぐに天候はくずれ、鎌倉沖で遭難。アベルとコリンのヨットは転覆する。その際、火の玉のようなものが海の中に入っていったのを十里と乱は見た。
コリン、十里、乱の3人は漁船に救われたが、アベルの遺体は見つからなかった。告別式の日、沖縄の万座毛からアベルらしき子供が来ているという電話があり、悪い冗談だと思った父親は電話を切る。鎌倉で遭難したのに沖縄で見つかるなんていうことはあり得ない。
乱の兄の勝がアベルらしき少年を沖縄で見かけたという。不思議な一致にコリン、乱、十里の3人は沖縄へ向かう。それがアベルだとはほとんど信じていなかったが、アベルの死をまだ信じられない思いがあり、その死を確認するために旅立ったのだ。
沖縄にいたのは、やはりアベルだった。だがまったくの別人のようになっていて、記憶もなく話すことも出来ない。楽器が弾けなかったはずなのに、何でも上手にこなす。それでもコリンたちはアベルを家に連れて帰る。
アベルは生活習慣のほとんどを忘れてしまい家族を困らせる。学校生活も優等生だった以前のアベルとは別人で周囲をとまどわせる。そんな中、声楽の先生としてアリアドがやって来る。彼はアベルに「君は音羽アベルではないよ」と告げる。果たしてアベルは何者なのか…?
コメント
バレエシリーズの次は音楽をテーマにした、とても美しいSF作品です。音楽と海と美少年という組み合わせが、何とも言えない雰囲気をもっています。でも少しコメディタッチなのです。「11人いる」のおもしろさと「銀の三角」の美しさを併せ持つという、変な説明ですが、わかりやすく言うとそんな感じでしょうか。気合いを入れて読まないとならないSFが多い中で、この作品はふと手に取りたくなる作品の一つです。
いろいろと異色な作品です。まず、萩尾先生の作品は日本が舞台のものはこの頃にはさほど珍しくはなくなっていますが、それでも少ないです。逗子の海が舞台で、沖縄や秩父なども登場します。何より、角川書店での連載は単発のイラストやエッセイを別にすると初めてになるのではないでしょうか?高校が舞台になっているため、学園ものの雰囲気ももちろんありますが、それが無理な印象はありません。ただ、学園もの風にした方が『ASUKA』の読者には受け入れられやすかったのでしょう。
漫画で音楽を表現することはもちろん難しいのですが、「のだめカンタービレ」はそれで大当たりしました。萩尾先生の音楽の表現はまた全然違って、とても美しく、今まで聞いたことがないような音が聴こえてくるような気がします。
アリアドの星の「友人という語彙が存在しない社会システム」というのが興味深いです。主従や先輩後輩などの上下関係しか結べないアリアドが対等な友人関係をアベル=ベリンモンとどうやって築いていくか、お互いに感応して音楽を産み出すということは心の中をすべて開いて見せないといけません。ずっとベリンモンであることを否定してきて、アリアドに引っ張り回されてきたアベルですが、最終的にはアリアドの心を開かせるように努力し、アリアドを引っ張ります。対等な関係を築いたアベルが最後につぶやく「こいつって、ぼくがいないとダメだな」という台詞がさりげなくて、好きです。
第一話の扉絵、魚と泳いでいるアベルたちの絵が私はとても好きです。カラーで複製版画にして欲しいものの一つです。原画展で見たときにその躍動感と美しさに圧倒されました。

2010.8.9

収録書籍
海のアリア 第1巻(ASUKA COMICS)

海のアリア 1 ASUKA COMICS 角川書店 1990.6

海のアリア 第2巻(ASUKA COMICS)

海のアリア 2 ASUKA COMICS 角川書店 1991.1

海のアリア 第3巻(ASUKA COMICS

海のアリア 3 ASUKA COMICS 角川書店 1991.5.17

海のアリア 第1巻

海のアリア 第1巻 小学館文庫 2001.8.1

海のアリア 第2巻

海のアリア 第2巻 小学館文庫 2001.8.1

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