トーマの心臓
ぼくは ほぼ半年のあいだずっと考え続けていた
ぼくの生と死と、それからひとりの友人について。
ぼくは成熟しただけの子どもだ ということはじゅうぶんわかっているし
だから この少年の時としての愛が
性もなく正体もわからないなにか透明なものへ向かって
投げだされるのだということも知っている
これは単純なカケなぞじゃない
それから ぼくが彼を愛したことが問題なのじゃない
彼がぼくを愛さねばならないのだ
どうしても
今 彼は死んでいるも同然だ
そして彼を生かすために
ぼくはぼくのからだが打ちくずれるのなんかなんとも思わない。
人は二度死ぬという まず自己の死 そしてのち 友人に忘れ去られることの死
それなら永遠に
ぼくには二度目の死はないのだ(彼は死んでもぼくを忘れまい)
そうして
ぼくはずっと生きている
彼の目の上に
2010.5.6
トーマの心臓 1 フラワーコミックス4 小学館 1975.2
トーマの心臓 2 フラワーコミックス 小学館 1975.4
トーマの心臓 3 フラワーコミックス 小学館 1975.6
萩尾望都作品集 11 トーマの心臓 1 小学館 1978.3
萩尾望都作品集 12 トーマの心臓 2 小学館 1978.4
トーマの心臓 1 転入生 小学館文庫 1980.11
トーマの心臓 2 同室者 小学館文庫 1980.11
トーマの心臓 小学館叢書 1989.12
トーマの心臓 小学館文庫(新版) 1995.9
Perfect Sellection 1 トーマの心臓I 小学館 2007.7.31
Perfect Sellection 2 トーマの心臓II 小学館 2007.7.31
トーマの心臓 プレミアムエディション 小学館 2023.2.14
ギムナジウム・シリーズ