作品目録

続・11人いる!―東の地平・西の永遠

 

初出誌
「別冊少女コミック」1976年12月号~1977年2月号 150p
前編:1976年12月号(1976.12.1) p125~175(50p)
中編:1977年1月号(1977.1.1) p199~248(50p)
後編:1977年2月号(1977.2.1) p9~59(50p)(※扉裏広告)
登場人物
タダ(タダトス・レーン):宇宙大学パイロットコースで学ぶ学生
フロル(フロルベリチェリ・フロル):タダと同じく学生。タダの婚約者。未分化の完全体
王さま(バセスカ):アリトスカ・レの王

トマノ:バセスカの兄
アマン伯:バセスカ派の家来
バパ大臣:アリトスカ・ラの大臣。急進派
ドゥマー:アリトスカ・ラの司祭。ババ大臣派。
オーセ:アリトスカ・ラの法司長
オナ:オーセの養女。次法司長の資格をもつ
ゾンブル:ドゥーズ大国の秘密情報部長巻
フォースソルダム四世:宇宙大学の学生。アリトスカ・ラ出身
ローン:アリトスカ・ラの和平使節団。フォースの叔父
チュチュ・エリア九世ドリカス:フォースの妹
レッド(火消しの赤毛):銀河連邦のスパイ。アリトスカ・レの情勢を見守っている
あらすじ
前編「11人いる!」で宇宙大学の入試にパスした彼らはそれぞれの道に進んだ。だが、アリストカ・レのマヤ王バセスカだけは大学に進学せず国を継いだ。
前回の旅でタダには超能力があるらしいことが判明、能力開発のための訓練も受けるようになる。フロルは失敗ばかりしているが、めげずに元気いっぱいだ。
そんな彼らに王さまからの招待状が届き、タダとフロルがアリストカ・レに行くことになる。にこやかに出迎える王様とは反対に、そこにあるのは世情苦しい国の人々だった。到着早々クーデターが起こり、タダとフロルは巻き込まれていく…。
コメント
なかなか入り組んだストーリーを、一気に勢いに乗せて読むことができる作品です。
アリトスカ・ラは古典的な伝統にのっとった落ち着いた国。しかし、技術力も金もない。国力充実と防衛のため、戦争を起こそうとする急進派を押さえ、戦争を避けようとする王。その伝統を利用して急進派が王を陥れてクーデターを起こすが、王はからくも逃げ出す。
しかし、わからないのはバパ大臣。戦争を望んでいたのに、和平使節団が殺されると「戦争は避けられん…」という。不名誉な戦争は避けたいのは理解できるが。あれだけ汚い手を使いながら、目的さえ達成できればいいと思うのだが、どうして戦争を避けたいのだろう?自分の組み立てたように話が進まなくて常時苛立っている。
ともあれ、戦争は避けたい西の国、両国の戦争に乗じて鉱山を狙う大国ドゥーズ、一国の勝手な振る舞いを許さない銀河連邦、と様々な国がそれぞれの思惑で王を追います。いったん拡散したストーリーを宇宙大学へと集約させる、その手法は見事です。
そんな中で魅力爆発はフロル。前作でもそうでしたが、堅物のタダに対して、喜怒哀楽の大きなフロルはよい組み合わせ。彼女がいなければ、このシリーズがここまで面白い読み物になったかどうか…。
収録書籍
続・11人いる!―東の地平・西の永遠

続・11人いる!東の地平・西の永遠 小学館文庫 1977.8

萩尾望都作品集 第14巻 東の地平・西の永遠

萩尾望都作品集 14 東の地平・西の永遠 小学館 1978.6

11人いる!―萩尾望都スペースワンダー

11人いる!萩尾望都スペースワンダー 小学館 1986.12

11人いる!

11人いる! 小学館文庫(新版) 1994.12

Perfect Selection 3

Perfect Selection 3 11人いる! 小学館 2007.8

投稿
SF音痴の私でも充分に楽しめる作品です。ここでも、双子星という、萩尾望都のキーワードがでてきます。弱小国が生き延びていくための苦悩と、神聖なるものが国を守るという自尊心。若き王バセスカが悩みながらも国にとともに生き抜いていく様は感動的です。
それにしてもソルダム四世が罠にはめられてしまうのには心が痛みます。自らの命を犠牲にしても両国の平和を守ろうとするその若い精神は見殺しに出来ません。ラストはタダの超能力が解決へと一気に導くのですが、何故か辛口です。
いろいろな人がいて、いろんな思いがあって、そこには悪意も愛情もある。宇宙といえども、人間の営みがあふれている様を想起させてくれて、大きなスケールで終わるこの物語が私は好きです。ここには、人を信じる萩尾望都がいます。

長谷部喜代美

湖畔にて

影のない森