作品目録

バルバラ異界

 

初出誌
「flowers」2002年9月号~2005年8月号 全24回
第1回 世界の中心であるわたし:2002年9月号(2002.9.1) p4~35(32p)
第2回 眠り姫は眠る血とバラの中:2002年10月号(2002.10.1) p127~155(29p)
第3回 公園で剣舞を舞ってはならない:2002年12月号(2002.12.1) p53~81(29p)
第4回 彼の名は絶望 彼女の名は希望:2003年2月号(2003.2.1) p4~35(32p)
第5回 エズラはどこへ消えた?:2003年3月号(2003.3.1) p121~151(31p)
第6回 六本木で会いましょう:2003年5月号(2003.5.1) p219~249(31p)
第7回 きみに肩車してあげた:2003年6月号(2003.6.1) p89~119(31p)
第8回 冷蔵庫の中のわたしを食べて:2003年8月号(2003.8.1) p71~101(31p)
第9回 火星の海で泳いでいた:2003年9月号(2003.9.1) p71~101(31p)
第10回 お父さんお帰りなさい:2003年11月号(2003.11.1) p71~101(31p)
第11回 お誕生日は同じ10月1日:2003年12月号(2003.12.1) p203~233(31p)
第12回 東池袋カササギのパン屋:2004年2月号(2004.2.1) p323~353(31p)
第13回 長い長い遺伝子の物語:2004年3月号(2004.3.1) p193~223(31p)
第14回 大人にだってわからない:2004年5月号(2004.5.1) p63~93(31p)
第15回 遠軽への遠い道:2004年6月号(2004.6.1) p12~43(32p)
第16回 ひとつになりましょう:2004年8月号(2004.8.1) p257~287(31p)
第17回 誰もあなたの名前を知らない:2004年9月号(2004.9.1) p47~75(29p)
第18回 はじめてのことだから:2004年11月号(2004.11.1) p79~109(31p)
第19回 ずっとあなたを愛していた:2004年12月号(2004.12.1) p79~109(31p)
第20回 死者からのメッセージ:2005年2月号(2005.2.1) p87~117(31p)
第21回 バルバラ崩壊:2005年4月号(2005.4.1) p175~205(31p)
第22回 花小金井ヒコバエ保育園:2005年5月号(2005.5.1) p95~125(31p)
第23回 ぼくのキリヤをかえしてくれ:2005年7月号(2005.7.1) p63~93(31p)
第24回 遠い昨日から遠い明日へ:2005年8月号(2005.8.1) p89~125(37p)
受賞
第26回(2007年)日本SF大賞受賞
登場人物
渡会時夫:ドイツの21世紀ユング研究所研究員。他人の夢に入り、情報を読み取るという特殊能力をもち、「夢先案内人」という仕事をしている。キリヤの父。
北方キリヤ:15歳の少年。渡会時夫と北方明美の息子。幼い頃に両親が離婚し、東京の進学校で独り暮らしをしている。パソコン上に<バルバラ>と名付けた島を創り、自分の安らぎの場所にしていた。
北方明美:キリヤの母。20歳のときに時夫と結婚。キリヤを産んで2年後に離婚。伊丹に住み、敬愛する世羅ヨハネの活動に協力している。
十条青羽:16歳の少女。9歳の頃に両親が謎の死を遂げてから7年間、遠軽の研究室で眠り続けている。夢の中では9歳の少女の姿で<バルバラ>という島に住んでいる。
十条菜々実:青羽の祖母。十条製薬の会長。32歳のときに特別研究員だったエズラと結婚、茶菜を産んだあと離婚し、その後再婚。
十条茶菜:青羽の母。青葉のアレルギー体質に悩んでいた。夫・勝一を殺し、自殺したらしい。
十条勝一:青羽の父。
エズラ・ストラディ:十条製薬で若返りの薬<バルバラ・シリーズ>を研究していた。22歳のときに十条菜々実と結婚するも、離婚。火星に関する預言を最後に行方不明に。
世羅ヨハネ:神父。緑の地球をつくる「グリーン・ノア・バーバラ計画」や、身よりのない子供達の施設「グリーンホーム」を運営。
マリエンバード:十条菜々実の若返った姿。渡会時夫と関係をもつ。
パリス・グリーン
(パイン):ヨハネのもつ施設からキリヤのいる学校へ転入してきた。キリヤのことをタカと呼ぶが…。
大黒先生:明美の前世療法をしていた。現在は宇宙生命科学の研究もしている。
百田太郎:北海道東中原人間科学研究所の研究員。時夫に青葉の調査を依頼。
目白秀吉:青葉の母親が通っていた目白サイコ・クリニックの院長。
目白マシロ:目白秀吉の息子。
目白マヒロ:目白秀吉の娘。
花園蕾香(ライカ):キリヤが通う大学予備校の友人。従兄弟に光介、風仁がいる。
カーラー・シルスバーグ:十条製薬と提携しているスイスのベンチャー企業・バルトハウスの医療スタッフ。十条菜々実の身体を使って老化治療の実験を行っている。
渡会清治:時夫の父。現在は下呂の奥の山の中でキノコ栽培と陶芸をしている。
波多野桜子:時夫の母。清治と別居婚をして、時夫を育てた。今は大阪の総合スクールの校長をしている。
<バルバラの登場人物>
アオバ:少女。
タカ:キリヤとそっくりな少年。ダイヤの息子。
パイン:ダイヤの養子。
ダイヤ:タカの母親。女優の仕事をしている。
マーちゃん:ダイヤの姉。パン屋を営んで、タカとパインとアオバの面倒をみている。
千里:夢で預言する。
雷ジジ:千里の祖父。
ヒナコ:人形作家。
シマさん:マーちゃんのパン屋の昔なじみ。
あらすじ
西暦2052年。他人の夢に入り込むことができる“夢先案内人(ゆめさきガイド)”の渡会時夫は、ある事件から7年間眠り続ける少女・十条青羽(じゅうじょうあおば)の夢をさぐる仕事を引き受けることになった。なぜなら、青羽は寝ているだけなのに、花が降ってきたり、血が滴ったりとポルターガイスト現象が起きているからだ。時夫がもぐった夢の中で青羽は幸せに暮らしていた。その島の名前は<バルバラ>。
時夫は青羽が眠り込むきっかけになった事件を調べ始める。青羽の母親は夫を殺し自殺した。そのとき、青羽は両親の心臓を食べたという話が報道されている。青羽の母の茶菜のカウンセリングをしていた目白クリニックの院長にも茶菜に関する話を聞く。
一方、時夫には2歳のときに別れた息子がいた。息子の名はキリヤ。今は伊勢にいる母親とも別れ、東京で一人暮らしをして大学進学予備校に通っている。彼がパソコンで作った島の形と青羽が眠り続ける<バルバラ>の形が一致している。そしてキリヤが火星の夢を見ると、部屋が砂だらけになるという現象が起きている。ついに青羽がキリヤの前に姿を現した。その青羽は現在の16歳の少女の姿だ。時夫に夢に入り込まないようにと警告をする。
目白クリニックの院長が竜巻に巻き込まれて死んだ。時夫はその竜巻が「青羽の世界を壊せという」院長の言葉に青羽が反応して起こしたポルターガイスト現象なのではないかと疑う。
青羽の祖母、十条菜々実はすでに経営からは引いているが十条製薬の会長だ。現在は会社のためアレルギーテストをボランティアで受けている。実はその実験はアレルギーテストではなく、若返りの薬の研究だった。菜々実は若返り、街に出る。すると偶然時夫に会い、映画のタイトルをもじってマリエンバート名乗り、一夜をともにする。
目白クリニックの院長の告別式に集まったキリヤ、パイン、ライカは息子のマシロに時夫の見た青羽の夢の映像を見せてもらう。時夫が青羽の夢の中に入り込んでいることを知ったキリヤは青羽からの警告を時夫に伝える。一方キリヤと青羽の世界がシンクロしていることに気付いた時夫は、キリヤに気をつけるよう忠告するが……。
コメント
2007年日本SF大賞を受賞した萩尾先生の最新SF傑作。バルバラと現実世界、青羽とキリヤの夢が交錯しながら物語はすすみ、どうやら火星やアフリカを巻き込みながら、日本の遠軽そして東京へと収束していきます。
「星の未来の記憶」未来では何もかもが一つだった、というのは「マージナル」でキラがとけ込んで行った未来や「スターレッド」で再生する星を思い起こさせます。不老不死や老化といったテーマを扱いながら、正面から「人類の記憶」と向き合った実にパワフルな作品です。SF読みでないと難解でもありますが、じっくり読めばそのおもしろさがわかると思います。
相変わらず無神経な母親を描かせたら萩尾先生は天下一品なのですが、今回は息子を理解したくて、取り戻したくて必死な父親という人物が登場しました。親の方から子供を見ているのは珍しいケースです。また一つ別のステージへ行かれてしまったような気がしました。

2010.8.27

収録書籍
バルバラ異界 第1巻

バルバラ異界 1 フラワーズコミックス 小学館 2003.7.20

バルバラ異界 第2巻

バルバラ異界 2 フラワーズコミックス 小学館 2004.4.20

バルバラ異界 第3巻

バルバラ異界 3 フラワーズコミックス 小学館 2005.1.20

バルバラ異界 第4巻

バルバラ異界 4 フラワーズコミックス 小学館 2005.10.20

バルバラ異界 第1巻 小学館文庫

バルバラ異界 1 小学館文庫 小学館 2011.12.20

バルバラ異界 第2巻 小学館文庫

バルバラ異界 2 小学館文庫 小学館 2011.12.20

バルバラ異界 第3巻 小学館文庫

バルバラ異界 3 小学館文庫 小学館 2012.1.14

入手しやすい本作品収録の単行本 バルバラ異界 第1巻  小学館文庫

バルバラ異界 第1巻(小学館文庫) 小学館 2011.12.15

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参考情報
翻訳:英語
Otherworld Barbara

Otherworld Barbara

翻訳:イタリア語
Barbara :1

Barbara :2

Barbara :3

翻訳:フランス語
Barbara, l'entre-deux-mondes volume 1

Barbara, l'entre-deux-mondes volume 2

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