作品目録

あぶない壇ノ浦

あぶない丘の家シリーズ

初出誌
「ASUKA増刊ファンタジーDX」1993年春の号・初夏の号・夏の号 187p
#4(前編):1993年春の号(1993.4.20)p437~498(扉裏広告)
#5(中編):1993年初夏の号(1993.6.20) p287~348(扉裏広告)
#6(後編):1993年夏の号(1993.8.20)
登場人物
平羅坂真比古(ヒラサカ・マヒコ):高校1年生。
平羅坂安曇(ヒラサカ・アズミ):予備校生。マヒコの兄だが、本当は宇宙人。
不動律子(リーコ):マヒコのクラスメートで坂の下の古道具屋の娘。
不動靜香:リーコの姉。
奥田正子:マヒコと同じ高校の歴史クラブの部員。義経マニア。
安達頼男:歴史クラブの部員。頼朝マニア。
赤間:リーコと同じ塾に通う子。平家物語マニア。
源頼朝
北条政子
源義経
静御前
あらすじ
お正月。マヒコはリーコと靜香の3人で鎌倉の鶴岡八幡宮に初詣に行く。帰りに江ノ電で「腰越」という駅を通り過ぎたときに靜香が言う「歴史ね。」という言葉を発端にして、源頼朝、義経の話が出るが、歴史オンチのマヒコは二人が兄弟であったことすら知らなかった。
マヒコは学校の歴史クラブの奥田さんと安達くんをリーコに紹介してもらう。彼らの話を聞くとそれぞれ義経マニアと頼朝マニアで、いろいろと教えてくれるのはいいのだが、それぞれに偏った歴史観で、最後に二人がケンカになってしまう。そこでリーコが赤間くんという平家物語に詳しい子を連れて来てくれて、マヒコに比較的客観的な歴史的事実を教えてくれる。
リーコと赤間くんが帰った後、マヒコがなぜかタイムトリップを起こし、北条政子に出会う。それはまさに政子と頼朝が伊豆山権現に駆け落ちした瞬間だった。マヒコは夢だと思いこみ、頼朝に「平家を滅ぼして鎌倉幕府を作る」と語り、陰陽師の預言かと政子に言われる。アズミが気付いてマヒコを現代に連れ戻してくれて、ようやくマヒコは自分がタイムトラベラーになったことを理解する。
それ以来マヒコは時折タイムトラベラーになって頼朝や義経に会い、通り一遍でない歴史を知ることになるが…。
コメント
私が鎌倉時代の知識を得た最初のきっかけは中学生のときに読んだ永井路子の「北条政子」で、もっと言うならばNHKの「草燃える」です。「草燃える」の元になったのは「炎環」という小説ですが、これがデビュー作だったとは!
参考文献の中に中央公論社の「日本の歴史」が入っていて、こちらの方が少し成長してから読みました。どうも「あぶない壇ノ浦」を読む限り、萩尾先生の鎌倉時代初期の史実のとらえ方、場面構成、キャラクターに対し、私が持っていたイメージが近いのはそのせいかもしれません。
最近歴史が好きな女性を「歴女」と呼んだりしますが、歴史好きの女性なんて、それこそ30年前から大勢いますので、普通のことじゃないかと思います。歴史の人物をヒーローとしてとらえ、ロマンチックに描くのは少女漫画ではお家芸というか伝統芸です。エジプト系と日本史系の二つがメインストリームかなと思いますが、いかがでしょうか?萩尾先生はオリジナルで描きたい物語を山ほどもっていた方なので、あまりその辺にはふれずに来られたのでしょう。しかしこの時点で歴史ものを描かれたのは、「ASUKA」の読者層に向けてのものなのか、あるいは「残酷な神が支配する」の連載との両輪で、この頃先生が好きだったものをのびのびと描かれたかったのか、いずれかなのかもしれません。

2010.8.17

収録書籍
あぶない丘の家 第2巻

あぶない丘の家 2 ASUKA COMICS 角川書店 1993.11

あぶない丘の家

あぶない丘の家 小学館文庫 2001.12.10

入手しやすい本作品収録の単行本 あぶない丘の家

あぶない丘の家 小学館文庫 2001.12.10

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