作品目録

 

初出誌
「プチフラワー」1984年12月号(1984.12.1) p49~72(24p)
登場人物
少年:主人公の少年。オルレアンに住む。
レオン:海辺の家に住む男。
ニコル:レオンの息子
あらすじ
少年は家出をして海辺の街のS市に行った。浜辺で男が何かを探している。たずねてみると難破した船の木ぎれを探しているのだそうだ。男はその木ぎれを使って、模型の船を造っていた。
海辺で服を濡らしてしまったので、海岸にある彼の家で子供の服を貸してもらった。その服は少年より少し小さい男の子の服だった。彼の家は模型の船だらけだった。写真たてに飾られた女の人の写真もある。少年は気づくと寝込んでしまっていて、目が覚めると、男は地下室の水槽でけがをしたと言い、血を流している。少年は手当を手伝う。気づくと、外は嵐になっている。今夜は帰れなくなってしまったので、その家に泊めてもらった。
翌日、できあがった船の進水式をするという。波が高い日なので向いていないと思ったとおり、船はどんどん流されてしまった。「沈んでしまうよ」と少年が言うと、男は「沈めばいい」と答える。少年は彼を残し、オルレアンの家に帰って行った。家出したものの、両親は出かけておらず、特におとがめはなかった。
2ヶ月後、初冬になった。新聞でS市の海岸の家に住む少年大量殺人犯がつかまったと報道されていた。新聞の写真を見ると、あの男だった。少年は新聞記事をむさぼるように読み、あの家の細部を思い返していた。なぜ、僕は殺されなかったのだろう…少年はそのことを考えていた。
春になり、再びあの家を訪ねてみると…
コメント
自分が殺されなかったのはなぜか、その理由を考えながら、殺されてもいいから一緒に船に乗って行きたかったと少年は思います。船が沈没してもいいから男と一緒に乗って行きたいのは、それだけ少年が淋しかったからなのでしょうか。

2010.7.6

「シュールな愛のリアルな死」で「メッシュ」の連載が終わって半年後に発表されたこの作品。実は「メッシュ」の子供の頃のお話でした。萩尾望都デビュー50周年記念「ポーの一族」展の図録にて公式に発表されたので、この作品を「メッシュ」シリーズの一作品としてとらえ直します。

2019.7.23

収録書籍
萩尾望都作品集・第二期 第13巻 メッシュ 3

萩尾望都作品集・第2期 13 メッシュ 3 小学館 1985.11

メッシュ 第2巻

メッシュ 第2巻 白泉社文庫 1994.12

萩尾望都パーフェクトセレクション 5 メッシュ II

Perfect Selection 5 メッシュ II 小学館 2007.10.31

天使の擬態

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