作品目録

恐るべき子どもたち

 

原作
ジャン・コクトー Les Enfants Terribles
初出誌
少年時代:「月刊セブンティーン」1979年5月号 p55~108(54p)
夢幻世界:「月刊セブンティーン」1979年6月号 p131~180(50p)
外界:「月刊セブンティーン」1979年7月号 p253~302(50p)
無限世界:「月刊セブンティーン」1979年8月号 p291~340(50p)
登場人物
ポール
エリザベート
ダルジュロス:ポールの学校時代の友人。
ジェラール:ポールの友人。
アガート:エリザベートの売り子時代に知り合った友人
ミカエル:エリザベートの結婚相手
あらすじ
少年時代:ポールはコンドルセ高等中学に通う14歳の少年。雪の降った翌日、学校でで雪合戦が繰り広げられる中、憧れていた少年ダルジュロスの放った石を詰めた雪玉にあたり倒れてしまい、友人ジェラールによって自宅に運ばれる。姉のエリザベートは家にいて弟と母親の面倒をみている。父はとうになく、母は中風で文句を言うばかり。外界の世界との縁のないエリザベートは目の前の現実から逃れるすべがなく、夢幻(空想)の世界に遊びに出かけるのが好きだった。そしてそれは病弱な弟も同じ。ポールを医師に診てもらうと、もともと心臓が弱かったため、学校に行くことを禁止される。ダルジュロスが雪玉の件で学校に対して反省した態度を見せなかったため、退学になったと聞き、もう誰も彼に会えないだと残念に思う。
夢幻世界:家にこもって暮らす姉弟は自由きままな生活をしていたが、突然母が死ぬ。もともと裕福ではない姉弟の生活費は医師とジェラールの叔父がみてくれることになった。医師の手配した看護婦兼家政婦がやってくるが、二人の生活を乱すようなことはしない。一時病状の悪化したポールが回復すると、ジェラールの誘いで海岸のホテルに3人で遊びに行く。そこでは無意味な万引きなど、善悪の区別のつかない子供の遊びにジェラールはついていけない。将来の計画、勉強も就職も何もない、無秩序な世界。この姉弟の世界が存在することは奇跡だとジェラールは思う。
外界:エリザベートは19になり、思いつきで働きに出る。ジェラールの紹介で洋装店のマネキンになる。そこで知り合ったアガートを姉が部屋に連れてくる。ポールは彼女をみて驚く。彼女はダルジュロスに瓜二つなのだ。エリザベートは一人暮らしだったアガートを誘い、一緒に暮らすようになる。彼女はポールを愛するようになるが、その想いを告げることができない。それはジェラールもエリザベートに対して同じだった。
エリザベートはジェラートの紹介で資産家のアメリカ人に求婚された。ところが結婚式の当日、彼は旅先で自動車事故で死ぬ。豪壮な邸宅に一人残されたエリザベートはポールとアガート、ジェラールを誘いて4人で暮らすことにする。ポールはアガートへの想いを募らせるが、好意を表に出せず、嫌っているそぶりばかりする。思いあまって、告白する手紙を送るが宛名に自分の名を書いてしまう。一方、アガートもポールに嫌われていると苦しんでいることをエリザベートは知る。彼女はアガートとジェラールを結びつけることにして、ポールの手紙を破棄し、アガートはジェラールが好きなのだとポールに告げる。
無限世界:エリザベートはジェラールとアガートを説得して結婚させることに成功した。ジェラールの叔父が亡くなったため、二人は新居に引っ越し、ジェラールは叔父のもっていた工場経営に専念する。姉弟の元へときどきやってきては気詰まりな会話をして帰っていくだけだ。
ある日ジェラールがポールにダルジュロスに再会したという。フランスとインドシナを行き来して自動車工場の代理人をやっていて、ジェラールの工場を見学に訪れたのだ。ジェラールは、ダルジュロスが少年時代に託された黒い毒薬の球をポールに手渡す。姉は二人してそれを飲み干すことが“奇跡”の完成と悟るのだった。
コメント
閉ざされた空間の中で、子供の秩序を生き抜こうとする姉弟の姿を描いたコクトーの問題作を萩尾先生が漫画化しました。
ダルジュロスの毒薬集めは少年時代の趣味の延長で、現実社会に対する反抗の現れだったのだと思います。彼は少年時代の気持ちを持ち続けたまま、きちんと大人になることが出来た。そういう人物を最後に登場させることで、ポールに息の根をとめたように思えます。
エリザベートからみたら俗物でつまらないジェラールは相手にならないのですが、ミカエル(アメリカ人ならマイケルでは…?)は俗物でも資産家で外国人だったからよかったのでしょう。
結局二人とも現実社会で生きることは無理だったのです。ジェラールとアガートは結婚してよかったと思います。
萩尾先生の絵がダルジュロスの高慢な姿、最後の二人の自殺場面など、次第に怖くなってきたように感じました。ブラッドベリとコクトーという外国人作家の作品を集英社にて立て続けに連載されたのですが、ずっと好きだった作家なのでしょう。
この年、萩尾先生は夏から秋にかけ2ヶ月間海外をまわられています。おそらくこの作品を脱稿された後と思われます。何か一つ区切りになったのでしょうね。

2010.6.24

収録書籍
恐るべき子どもたち(セブンティーン・コミックス)

恐るべき子どもたち セブンティーン・コミックス 集英社 1980.6

萩尾望都作品集・第二期 第7巻 恐るべき子供たち

萩尾望都作品集・第二期 7 恐るべき子供たち 小学館 1985.2

恐るべき子供たち(小学館文庫)

恐るべき子供たち 小学館文庫・新版 1997.5

入手しやすい本作品収録の単行本 恐るべき子供たち(小学館文庫)

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