作品目録

きみは美しい瞳

 

初出誌
「ASUKA」1985年8月号(創刊号 1985.8.1) p167~206(40p)
あらすじ
メールデールとハプトは学友だったが、ハプトは国に帰って領土を継ぎ、メールデールは僧院に残り聖職者になる勉強を続けている。2年ぶりにメールデールが国に帰るとハプトは婚約者のリア姫を紹介する。が、ハプトはリア姫に冷たくあたるため、リア姫は怒って帰ってしまう。
ハプトはメールデールに万華鏡のような瞳をした人間によく似た鳥を見せる。それは辺境に住み、夢で人間の深層を見せる「夢鳥」であった。
しつけと称して夢鳥をむち打つというハプトに「退屈しのぎに小さいものをいじめている」と非難するメールデール。二人の言い争いにおびえた夢鳥がメールデールを打つが彼自身が鳥をかばう。「自分自身ですら自分をもてあます」というハプト。メールデールはハプトから夢鳥を譲り受ける。
ハプトが夢鳥によって見させられた夢は裸の美女に囲まれているわいざつな夢などではなく、本当はメールデールに接吻を繰り返す美しい夢である。
メールデールは密輸入されてきた夢鳥を故郷の星に帰そうとする。夢鳥は旅の途中ですっかりメールデールに慣れる。しかし、ある晩夢鳥がメールデールに見せた夢は恐ろしい汚濁の沼に沈んでいく夢だった。苦しさの余り目が覚めると、メールデールは夢鳥を絞め殺してしまっていた……。
コメント
粗暴でイヤな人間であるハプトの見る夢が美しい夢で、聖職者になろうとしている優しいメールデールの見る夢が嫌な夢。嫌な自分に苦しめられ、自分をもてあましているハプトですが、メールデールに対する想いは美しく清らかです。
一方聖職者になろうとしているくらいなので、美しく清らかであろうと努めているメールデールなのですが、たった一度の悪夢に打ち砕かれてしまうほど、その清らかさは虚弱な基盤に立ったものだったのでしょうか。
二人はよく似ている、まるで一つの心の裏表のように、という言葉が出てきます。善悪をそれぞれの表と裏から描いた作品に「城」があります。「アロイス」や強いて言えば「サイフリートとトーマ」なんかもそれに近いものがあるでしょう。
人間の両面性を単純に描くのではなく、二人の人間を対比させることにより、その両面性をより一層際だたせるという作風です。
「あなたは自分の中にある優しさにさえ傷つく」というたった一言でハプトを理解し、優しく包んでいることがわかるリア姫。ちょっとしか出ていないのですが、いい役です。
大変美しい作品です。是非読んでみてください。
2012.8.28
収録書籍
モザイク・ラセン(秋田文庫)

モザイク・ラセン 秋田文庫 1998.12.10

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A-A' 小学館文庫(新版) 2003.9.10

幻想の迷宮

幻想の迷宮 小学館フラワーコミックスα 2009.2.15

愛の宝石

Flower Comics Masterpieces 
愛の宝石 小学館 2012.12

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A-A' 小学館文庫 2003.9.10

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