作品目録

アロイス

 

初出誌
前編:「花とゆめ」1975年第10・11合併号(1976.6.5) p15~59(44p)
後編:「花とゆめ」1975年第12号(1976.6.20) p249~290(42p)
登場人物
ルカス・キップハルト:高等中学の寄宿生(14才)
アロイス:ルカスの双子の弟の名前。出産時に亡くなっているが、ルカスは自分の内部に間違いなく「アロイス」が存在していることを確信している。
ベン:ルカスの同級生で通学生。
ライダー:上に同じ。
リースベルト:ルカスの幼馴染。互いに惹かれあう。
ミケール:リースベルトの弟。心臓病のため病弱だが、普通のやんちゃな子供。
フェローネ夫人:ルカスの母
ハーゲン・ハインツ:フェローネ夫人の知人で、売れない小説家。以前は医師だった。
あらすじ
ルカスは明るく素直な普通の子だが、ちょっと変わったところがあった。亡くなったはずのアロイスが自分の精神の中に生きていることを疑わず、日常的な会話の中でも、周囲の人たちに「アロイス」として話し、振舞うことがあるのだ。家族、友人、教師などは、これを「一人遊び」と呼び、時として困惑させられることもあった。
他人の見ていない時にもルカスとアロイスは会話を交わす。時に鏡の前で向き合ってその外と中で文字通り「対話」することもある(鏡の中のアロイスはルカスと微妙に表情が違うのだ)。アロイスはルカスと性格が違う。知識欲が強く、怜悧で大胆。ルカスの行動をはがゆく思い、強引に行動に干渉したりすることもある。周囲の人々はその様子を垣間見て、ルカスの精神の変調を疑った。そこで母フェローネ夫人は、夏休み中それとなく様子を探ってもらうようハーゲンに頼んだのだった。
その夏、ルカスは友人のベンとライダーを家に招待し、楽しく過ごそうと計画していた。もちろんリースベルトも含めて。楽しい思い出になるはずだった。しかし、悲劇は起こった。アロイスは自我が強くなるにつれ、自分に身体がないことを悲観し、いらだちを抑えることができなくなっていた…
コメント
双子と二重人格にまつわるお話です。今でこそ二重人格は「解離性障害の一種」と認識され、実際に存在するものと認知もされていますが、作品発表当時は少々オカルト的な扱いだったように思います。今から見ると、ルカスの中にアロイスがいることは「強いショックを受けている」「自己保存のため」と考えると、あってもまったくおかしくはないと思います。とても先駆的な作品ではないでしょうか。
白泉社への掲載は初めてです。「温室」で集英社デビューをしたり、「ポーの一族」で名をあげたところで、一ツ橋系の中ではすが、各所に展開されている時代ですね。

2010.6.7

収録書籍
アロイス―萩尾望都傑作集

アロイス 白泉社 (花とゆめコミックス) 1976.8

萩尾望都作品集 第17巻 アメリカン・パイ

萩尾望都作品集 17 アメリカン・パイ 小学館 1977.10

アメリカン・パイ


アメリカン・パイ 秋田文庫 2003.6

投稿
読んだ当時、ちょうど登場人物たちと同年齢ぐらいだったのでインパクトが強烈でした。「自分は何のために生きているのか。」「そもそも自分とはどんな存在なのか」という疑問は、この年頃になると誰しも感じるものだと思います。私自身、この作品を読んだことがきっかけで心理学や哲学に興味がわき、大学でもそういう講座を必死で探し、受講してました。(全然ものにはなりませんでしたが。苦笑)「自分の中に、別の誰かが存在しているかも」というのは、ミステリアスでワクワクし、その反面非常に恐怖を感じるシチュエーションです。そんなあり得そうもないことにこれだけのリアリティを持たせる萩尾先生の才能に畏怖さえ感じます。
また、「個体発生が系統発生を繰り返す」という考え方にもはじめて触れ、「進化」のことも勉強しましたね。(「バルバラ異界」で、ヤギの餌になってしまった本の題名もこのことに関連するのでしょうか。「クリシュナの季節」のワンシーンでも、壮大な生命の歴史を数行に凝縮して見せてくれる凄い文章があります)

2003.10.23 へびいちごさん

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参考情報
舞台

リデル・森の中

ランプトンは語る