作品目録

ポーチで少女が子犬と

 

初出誌
「COM」1971年1月号(1971.1.1) p81~92(12p)
あらすじ
家の前のポーチで少女が犬と遊んでいる。雨が降っている。医者、姉、家政婦、父親と次々帰って来て、少女に家の中に入るように言うが、少女は入らない。すると...
コメント
これは恐ろしい作品です。『COM』に投稿された作品で、「火の鳥」の入稿ページ数が足りなかったため、「そう言えば」と編集長が引き出しの中から出してきたのが「ポーチで少女が子犬と」だったそうです。
萩尾先生はすでに商業誌でデビューしていたのですが、描きためていたものが『なかよし』ではかなりボツになっていたようです。それらは1971年に『少女コミック』をはじめ小学館の漫画誌でどんどん掲載されることになるのですが。『なかよし』に要求されるいわゆる旧態依然とした少女漫画が萩尾先生が描きたかった少女漫画ではなかったのは確かでしょう。それで岡田史子というスターが寄稿していた『COM』に作品を投稿したのではないでしょうか?(岡田史子氏のファンであったことは「ガラス玉」の解説に書かれています)
この作品は自由な発表の場としての『COM』を意識されて描かれたのでしょう。かなり前衛的で、衝撃的なものがあります。岡田史子氏が『COM』以後の商業漫画の世界ではおそらく成功しなかったと予想できますが、萩尾先生がこの「ポーチで少女が子犬と」のような作品を描き続けたとしても、それでは『COM』以外の商業誌には掲載されなかったでしょう。
萩尾先生は本当に自分の描きたいものを描けるようになるまで、粘り強く努力されて来た。『なかよし』時代は無論のこと、それ以後も「ポー」や「トーマ」が出てもそうして来た。その結果が現在我々が読むことが出来る多くの作品群です。やはり、天才といえども交渉能力や機を見る能力がないと大成しない、ということでしょうか。

2010.8.10

収録書籍
萩尾望都作品集 第1巻  ビアンカ

萩尾望都作品集 1 ビアンカ 小学館 1977.2

ルルとミミ

ルルとミミ 小学館文庫 小学館 2012.9.20

投稿
このプロ7作目で、後に頻繁に使われる人物設定・重要な主題となる「周囲の人々とは感覚や考え方が違うために疎外感を感じる人物」「家族から虐待される子」が主人公として初めて登場します。
作者は後に発表する作品で、家族により傷つく子の母親を、肉体的か精神的に弱いという設定、または登場シーンが少ないなど、力を弱めて登場させつつも、子の傷については責任があると明確に描くことが多いのですが、すでにこの作品でも母親は「病弱」であり「救いのない結末に荷担」します。
しかしこの作品は、疎外や虐待を描くための作品とはあまり思えません。作者がインタビューやエッセイで語る、「受験勉強」と「親に反対されつつ少女漫画家を目指す」というような少女時代に、あるいはこの作品発表時点での親との葛藤などのために、自身の胸の奥に沈殿し鬱積した重苦しいものを、大きなため息のように吐き出した作品に思えます。
 この作品では名前すらなく、その心の内も性格も境遇も明瞭ではない、虐待される子と虐待する側が、年月を経てしだいにくっきりと描かれるようになってきます。

文:まいが

入手しやすい本作品収録の単行本 ルルとミミ

ルルとミミ(小学館文庫) 小学館 2012.9.20

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参考情報
翻訳:英語

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