作品目録

 

初出誌
「プチフラワー」1983年9月号(1983.9.1) p7~39(33p)
登場人物
ラドクリフ
シルバード:ラドクリフの父親
アダム・マートン:ラドクリフの学校の上級生。
オシアン:ラドクリフの学校の上級生。ギリシャ人。
キャルガリ先生:ラドクリフたちの先生。
メディーナ:キャルガリ先生の若い奥さん。
ママ
あらすじ
ラドクリフが6歳のとき、父と母は離婚した。幼い弟と妹を母は連れて行ったが、ラドクリフは自分の意志で父のもとに残った。それ以来ずっとラドクリフの心の中では小鬼が石を積み上げ、お城をつくっている。
ラドクリフが11歳になったとき、父親は仕事で海外へ行くことになり、寄宿学校に入れられることになる。そのとき学校に対して父親が行った「神経質でわがままな子」という言葉にラドクリフは傷つく。それまで父に余計な手間をかけさせないよう、良い子でいるように心がけていたのに。
寄宿学校でラドクリフは潔癖症になり、手を洗ってばかりいる。級友に心を閉ざし、口をきこうとしない。小鬼のところへ行くと、ラドクリフが父親を恨んでいること、学校が嫌いなことを指摘され、そんなことはないと反論する。
ラドクリフは上級生のクラスに入れられる。アダム・マートンは親切にしてくれるが、オシアンはいじわるばかりする。しかし、そこでラドクリフは手を洗うのをやめることが出来た。アダムは立派で欠点がなく、ラドクリフはあこがれている。
ラドクリフが小鬼のところへ行くと、アダムのお城は表面は真っ白だが、裏は崩れていた。お城を作る石は黒と白が半分ずつと決められている。アダムには欠点がないから、その城は黒い石を積まないので、裏が崩れてできあがらないでいるのだ。オシアンは表から見ると黒い城だが、裏は真っ白だった。こんなに真っ白では表は真っ黒にならざるを得ない。
ラドクリフには小鬼のいうことが納得できないのだが…
コメント
寓話的に語られていますが、非常にメッセージ性の強い作品です。少年の心の成長を、こんなふうに直接的に萩尾先生が語られるのは珍しいことだと思います。小学館文庫では「訪問者」の中に収録されていますが、すべてではありませんけれどこの文庫本、少年を主人公にした作品がまとめられています。
自分を知るということ、見つめて目をそらさないことが、どうしてこんなにつらいのか。
迷いや悲しみ、怒りや夢をあこがれのしっくいでぬりかためて
ぼくは自分自身の城をつくる。
「恋したことないのね!」と鮮やかに去っていくメディーナが、すてきです。私は彼女のお城が好きです。黒いのも白いのも磨いているうちに同じようになるのかもしれません。

2010.7.5

収録書籍
萩尾望都作品集・第二期 第8巻 訪問者

萩尾望都作品集・第2期 8 訪問者 小学館 1985.5

訪問者


訪問者 小学館文庫(新版) 1995.9

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