「貴婦人と一角獣展」に行ってきました。
萩尾先生もご覧になったという、国立新美術館の「貴婦人と一角獣展」に行ってきました。NHK Eテレの「日曜美術館」で予習して行ったにもかかわらず、実物の展示してある部屋に入ったときに、思わず小さな声をもらしてしまうほど、その大きさと美しさに圧倒されました。
庶民には縁遠い、貴族の作らせた美しい工芸品ではありますが、中世の頃は一角獣の実在に疑問はもたれていなかったということが、なんだかとてもわかるような気がします。真ん中に立って、すべてのタピスリーを俯瞰し、じっくりと個々のタピスリーに見入って、最後にまた真ん中に戻ってぐるりと俯瞰します。すると、「視覚」だけ高さが違うことに気付きました。幅はいろいろなのですが、高さはだいたい揃っています。他のものは木が4本あるのに、これだけ2本。調べると50cmも短い。理由を知りたくて図録を買ってしまいました。どうやら修復の都合上、一部織り込まれているために、これだけ短くなっているようです。(各タピスリーの写真)
私が一番好きなのは「我が唯一の望み」ではなくこの「視覚」です。ユニコーンの顔がうっとりとやさしげで、ひざの上にちょこんとのっけた足がかわいらしい。でもこの貴婦人、川俣しのぶさんに似ているような気もします。
すべてにおいて目を引いたのが貴婦人や侍女のドレスの質感。折り目の美しさなど。もともとが織物なので当たり前なのかもしれませんが、例えば「味覚」の侍女のひざのあたり、素晴らしくリアルでやわらかな質感です。
保存状態を保つため、照明を強くあてることができないが故に、うすい赤でしか見ることが出来ない実物を補完する意味で、別室にディティールの写真が多数展示されていて、本来はこういう「赤」だったんだろうなと頭にインプットしつつ、再度またタピスリーの間に戻ったりしていました。
ディティール写真の中でも特に「うさぎ」の多さに目をひかれ、これはうさぎフェチは行かないと、とも思いました。
おそらく27歳の頃の萩尾先生がご覧になったこのタピスリー。当時すでに「ユニコーン」というモチーフを気に入られたご様子で何度かか描かれています。あらためて、またこの作品が日本にやってきたことは感慨深いことでしょう。