2012年6月 6日

【書評】〈少女マンガ〉ワンダーランド


少女マンガワンダーランド
「〈少女マンガ〉ワンダーランド」菅聡子,武内佳代,ドラージ土屋 浩美編 明治書院 2012年5月29日

お茶の水女子大の教授を中心とした研究グループのつくった本です。この中に「ポーの一族」の論文が入っているので買って読んでみました。その論文の著者の菅聡子教授は本書刊行の直前に48歳の若さでお亡くなりになっています。

執筆者は国文学や美学系の方が多いようです。2010年頃の論文がベースのため、論文内容やインタビューに若干時間差を感じますが、全体的に少女マンガ及び少女マンガ研究を俯瞰して読むことが出来ます。少女マンガの研究史のポイントをかいつまんで説明してくれています。しかし、テーマを絞るところもきっちり短くまとめてあります。

「のだめ」の論文は楽しいのですが、作品中より更に論文の方がオノマトペだらけなのはちょっと変かなと思ったりもします(こちらに一部掲載)。「ヘルター・スケルター」はタイミングが良いのですが、完全ネタバレのため映画も漫画も未見の方は要注意です(論文でネタバレなしは無理でしょうし)。

少女マンガ・パワー展は続いているのでしょうか?今は講演会ツアーだけのようですが。徳先生は相変わらずパワフル。海外の人がみんな「セーラームーン」から入ってるのかおかしいです。

お目当ての「ポーの一族」の論文は、もともと英語で書かれた物を抄訳という形で翻訳されたものだそうです。それ以外にも何度もちらちらと先生のお名前が出ています。

■目次
I〈少女マンガ〉の歴史をふりかえる
〈少女マンガ〉とは何か
察明期六〇年代少女小説から始まった(ドラージ土屋浩美)
七〇年代花開く少女マンガ(ドラージ土屋浩美)
八〇年代学園にすべてがあった(倉田容子)
九〇年代j現在少女から女性へ、そして新しい世代へ(川原塚瑞穂)
少女マンガ批評の系譜(武内佳代)

COLUMN 少女マンガとBL(ポーイズラプ) 性とジェンダーの冒険(内海紀子)

INTERVIEW 吉野期実。美しき絶滅種のような永遠

COLUMN 少女マンガとメディアミックス。そのはじまりは...(矢津美佐紀)

II テクストとしての〈少女マンガ〉
永遠の命、永遠の孤独―『ポーの一族」の系譜(菅聡子(抄訳:ドラージ土屋浩美・武内佳代))
したたかな乙女ちっくと、ひよわな「児童文学」(藤本恵)
カタルシスとしての少女ホラーマンガ(ドラージ土屋浩美)
「大奥』論―性役割・制度・性的身体(本田和子)

III  テクストとしての〈少女マンガ〉
少女マンガにおけるSF性と性差混乱(小谷真理)
『のだめカンタービレ』における笑いの要素(青山友子)
少女マンガと文学―ジャンルを超える表現(久米依子)
そして彼女たちの肉体の黄金―岡崎京子『へルタースケルター」における身体をめぐる抑圧と欲望(天野知香)
海外から見た〈戦闘少女〉(レベッカ・スーター,内堀奈保子翻訳)

COLUMN 少女マンガと「ふろく」「ふろく」は決して「付録」でない(内堀瑞香)

III 名セリフで読む〈少女マンガ〉名作ガイド

IV 海外〈少女マンガ〉事情
ESSAY 徳雅美 海外における少女マンガの受容、発展、そして変貌
巡回少女マンガ展示会「Shojo Manga! Girls Power!」報告(2005-2011)

プログ座談会日本の少女マンガ、ここがおもしろい!

V 〈少女マンガ〉作家紹介45

おわりに

その他