萩尾望都先生が紫綬褒章を受章
2012年4月28日、萩尾望都先生が平成24年春の叙勲にて紫綬褒章を受章することが発表されました。おめでとうございます。
萩尾先生ならびに先生を長年支えて来られたスタッフの皆様に心よりお祝い申し上げます。
紫綬褒章を受賞されるのは、女性漫画家としては長谷川町子さんに続く二人目、少女漫画家としては初となります。紫綬褒章は学術、芸術、スポーツ分野における功績を認めて国が授与するものです。漫画家の受賞者は風刺画家や新聞での連載をもっている方に始まり、その後ストーリー作家も加わりましたが、青年漫画、少年漫画を描かれる男性ばかり受賞されてきました。少女漫画はすでに国民的な支持を得ているにもかかわらず、形として国が表明する機会がありませんでした。
今回の受賞、萩尾先生の名誉という意味だけでなく、少女漫画という芸術分野が国家的に認められたという意味でたいへん重要なものと私は考えています。
私は数年前に紫綬褒章受賞者に少女漫画家がいないことにふと気付き、以来忸怩たる思いをしてまいりました。萩尾先生こそが最初の受賞者となるだろうことを予測および期待して、このサイトを運営してきました。そのため、知らせを聞いたときはうれしさのあまり胸がいっぱいになりました。萩尾先生のこれまでの功績が認められたことに感激しました。
意外なことですが手塚治虫先生は紫綬褒章を受章されていません。61歳で亡くなられましたが、その直後に勲三等瑞宝章を受賞されています。
以下漫画家で紫綬褒章を受賞された方の一覧となります。
1969年:田河水泡
1974年:近藤日出造
1974年:横山隆一
1980年:杉浦幸雄
1981年:横山泰三
1982年:長谷川町子
1986年:加藤芳郎
1989年:岡部冬彦
1991年:水木しげる
1992年:富永一朗
1995年:馬場のぼる
1996年:鈴木義司
1997年:サトウサンペイ
1998年:赤塚不二夫
2000年:東海林さだお
2001年:松本零士
2002年:ちばてつや
2003年:さいとうたかを
2004年:山藤章二
2004年:黒鉄ヒロシ
2005年:水島新司
2007年:弘兼憲史
2010年:西岸良平
その他主な叙勲。
1989年:手塚治虫(勲三等瑞宝章)
1992年:長谷川町子(国民栄誉賞)
【追補2012年5月6日】
手塚治虫先生が何故紫綬褒章を受章されていないか。その件について典拠がありました。「夫・手塚治虫とともに―木洩れ日に生きる―」(手塚悦子著 1995年1月20日 講談社)のp241。昭和63年1月29日、毎日映画コンクールと朝日賞の授賞式のはしごをしたことに続いてこうありました。
二月はじめに文化庁に呼ばれ、担当官から時期の紫綬褒章の候補にあがっていることを告げられました。紫綬褒章は文化芸術部門に授けられるミニ文化勲章にあたるものです。
しかし、手塚はお断りしたようでした。どういう意向でお断りしたのかは、私にも話してくれませんでした。ただ、文部省の建物が古く傷んだままになっているのを目にし、我が国の文化の象徴のようで悲しかった、と語っていたのを覚えています。