イベント

西原理恵子の人生画力対決~萩尾望都SPECIAL~

会期等
会場:マウントレーニア渋谷
会期:2014年1月14日(火)19:00~22:30
出演:萩尾望都、西原理恵子、ヤマザキマリ、伊藤理佐、八巻和弘(司会)
はじめに
japan expo
萩尾先生は、いつもそうですが、この日も上品でオシャレで素敵でした。ずっと前から画力対決の打診を受けていたご様子で、最初の頃は断られていたようですが、最終的にお引き受けになり、この日がやってきました。ファンの皆様の中には「モー様に失礼なことしたら承知しないわよ」という方もきっと大勢おられるでしょうけれど、私は「いやいや、全然平気。萩尾先生マイペースだし、お強いから。」と思ってました。
ニコ生で見ると、細かいところまで見えるのですが、会場の様子がわかりませんよね。最初に「画力対決初めての方」という声にあがった手はざっと9割くらいでした。
過去の画力対決の模様をごく一部見せてくれましたが、ここニコ生では流れていないんですね。竹宮惠子先生がエドガーを描かれたときは本当に驚きました。里中満智子先生、東村アキコ先生の模様も。
この回が『ビッグコミック・スペリオール』に掲載されるのは4月くらいだそうです。
西原さんから萩尾先生に最初に謝りたいこと。「いけちゃんとぼく」は「マリーン」のパクリだと言われることが多いけど、「A-A'」だ。「A-A'」が一番好きだとのこと。
萩尾先生が「今日はエプロンじゃないんですね」と言われただけで、もう緊張した面持ちな西原さん。「私、西原さんのすごいファンなので」と言われたときの、「やめてー恥ずかしい!でも嬉しい!」っていう感じが伝わってきて、西原さんらしくなくて、とてもよかった。
いつも思うのですが、漫画家の、それももう地位のある先生方も萩尾先生の前に出ると私たちと同じ一人のファンになってしまうんですよね。もちろんプロなので、プロとして何かを吸収してやろうという野心も感じますが、最初はみなさんそんな感じがします。
音楽
・開演前&幕間:ドン・マクリーン 「アメリカン・パイ」/マドンナ「アメリカン・パイ」
・第一部登場-西原さん・八巻さん:矢沢永吉「止まらないha~ha」
・第一部登場-萩尾先生:甲斐バンド「完全犯罪~フェアリー」
レポート
1.本人確認「残酷な神が支配する」~ジェルミとイアン

ジェルミとイアン

最初に「下絵とか描けるんですか?」と八巻さんに質問していましたが、実は画力対決は事前打ち合わせ一切なしなんです。おもしろくなくなってしまうから、ということだそうです。結局下のアタリに蛍光の黄色のペンを使われることになさいました。使われたのはサインペンです。この時は最初に輪郭を描かれました。

この生描きのとき、会場中が「しん」と文字通り、息を呑むように見つめていました。私も緊張して見つめていました。「萩尾先生の・手が・動いて・ジェルミ・が!」という気持ちを、おそらく会場の皆さんもニコ生をご覧になっていた皆さんも全員もたれたのではないかと思います。

2.本人確認「王妃マルゴ」~マルゴ

マルゴ

ここから描き方を変えます。まず顔の輪郭、髪などポイントを蛍光ペンで描いて、次にサインペンで「眉」→「目」→「鼻」→「唇」→「輪郭」→「耳」→「髪」と描きます。そして、すごく紙(色紙)を動かされます。おそらく手首への負担を考えられてのことだと思います。

水を打ったような静けさで、みんなじっと見つめています。八巻さんも西原さんも、完全にのまれていますが、気をとりなおしたように、八巻さんが口を開き、西原さんがそれに続く、という感じでした。

3.お題「サイボーグ007」)→石ノ森プロ

サイボーグ007

お題が出されると「あ、はい」と即答して、自信満々で描き始められました。
八巻「萩尾先生、線に迷いがない。何度も描かれたことがありますね。」
萩尾先生「高校時代、真似して描いていました」。
4.お題「ユニコ」→手塚プロ

ユニコ

ユニコ萩尾先生が描かれたのは、「ユニコ(小学一年生版)」(無料サンプルの4/5)にあった、大きくなったユニコですね。

「ユニコ」は手塚治虫作品の中でも数少ない、興行的に厳しかった作品。「神様の失敗した作品を見るのは心が温まる。神様も大振りしてんだ!」と西原さん。
5.お題「やなせたかし先生と僕の頭をお食べのアンパンマン」→やなせたかし先生アンパンマン

やなせたかし先生とアンパンマン

(やなせ先生が頭をちぎるわけじゃないですよ!萩尾先生!意図的にボケをかましましたね。)

漫画家協会賞の授賞式のときに、やなせ先生が10分か15分歌って踊るのが恒例だそうですが、2年前、猫耳を萩尾先生につけて踊らせたという出来事が。みなさん「やなせ先生がおっしゃるんなら」と言って踊るんだそうです。

アンパンマンの胸のマークが思い出せない萩尾先生。自信がないいとみなさん字を書きます。正解はニコちゃんマークです。
6.お題「失恋ショコラティエ」~松本潤→失恋ショコラティエ(フジテレビ)

松本潤

八巻「萩尾先生、ジャニーズとかはまったことあります?」
萩尾先生「マッチとかSMAPなら。それ以降になると孫のような年齢になるので、だんだん距離が出てきて…」
八巻「その中で描ける人っています?」
萩尾先生「(長考)…いない…」

西原さんが「松潤って萩尾先生の黒髪の巻き毛のキャラそのもの」と。そうかも。
7.お題「機関車トーマス」~トーマス→THOMAS & FRIENDS

機関車トーマス

西原さん「トーマスの顔が気持ち悪いんですよね。」
萩尾先生「私もちょっと多数描いてごまかします」

萩尾先生「機械は苦手ですね。ちゃんと見本がないと。細部が全然思い出せない。」

でも、トップハムハット卿がかわいいです。
8.お題「2020年の東京オリンピックのキャラクター」

2020年の東京オリンピックのキャラクター

八巻さんが画力対決の申し入れをしたとき、マネージャーの城さんから“萩尾さんが「実在しないキャラクター」を描いてみたいと”とのことで、このお題になったそうです。

八巻さん「(オリンピックのキャラクターって)どの国のもひどいじゃないですか」とのことで、“ガッカリ感を狙う”がテーマのようです。
西原さん「ジブリがなんとかしてくれるんじゃないか。」「村上隆がヴィトンがコラボしたみたいな」
萩尾先生「日本の古典的なロゴを…」真剣です。

その真剣さが反映されたものが、こちら。
これは本誌で使われるんでしょうか…?もちろん、そうでしょうね。
八巻さん「これは、どちらが描いたかわからない…」失礼な!でも反論できない。
しかもオリンピックのロゴが間違っています。○三つが上です。

「画力対決」8巻の表紙にしたいとのことですが、絶対やめて下さい。
9.お題「風と木の詩」~ジルベール→「風と木の詩」表紙

「風と木の詩」~ジルベール

(西原さんはセルジュを描かれました)

画力対決の竹宮惠子先生の回で萩尾先生のエドガーを描かれたので、当然来ると思っていたお題です。

萩尾先生「009に金髪の線を描けば…」。

西原さん「竹宮惠子さんの唇は縦に割れているんです。美内すずえさんも割れていて、リップクリーム塗った方がいいのになぁと思ってました。多様されていたのは、伏し目がち。」
萩尾先生「いつも脱いでいたような気がする。」
西原さん「あ、そうそう、この子よく乳首触ってた。女子中学生、ジルベールの乳首が出てたら、朝からテンションマックス!今日はすごいで!みたいな。」
10.お題「キャプテン翼」~翼くん→今のキャプテン翼

「キャプテン翼」~翼くん

西原さん「キャプテン翼、今、24等身くらいになってますね。寸尺漫画です。今『漫画ゴラク』で連載されているんですが、常に新しいジャンルに挑戦するなと思って。」
萩尾先生「キャプテン翼も黒い髪の009のような」
西原さん「外国でサッカーやってると、ずっと誰にもパスしないでドリブルばっかりしてると「ツバサ~」って言われるとか。そういう名前がついているそうで。」

西原さん「高橋陽一先生の翼は動きなんかないもん。あれより千倍上手ですよ。」
萩尾先生「口の中に縦線がいるんです。」
11.お題「くらもちふさこ おしゃべり階段」→正解

くらもちふさこ「おしゃべり階段」

西原さん「きっちり描かない方なんですよね。隙間があるんですよ。口もひっついてないんですよ。あれがいつも気になって仕方がない。手足が独特で、カクカクしている。」

萩尾先生「よし、階段をかけばなんとかなる」

先生が「モザイク・ラセン」とかで螺旋階段がお好きなのは存じておりますが、それじゃあ「おしゃべり・らせん階段」ですよ…。
12.合同色紙「ポーの一族」~エドガー

「ポーの一族」~エドガー

八巻さん「萩尾先生、エドガー、描けますか?」
萩尾先生「エドガーのいとこくらいなら描けます」(→この言い方、いつもなさいますね)。
西原さん「エドガーって、ずっとスンスンしてる(悩んでる)。金あって、いい屋敷住んで、ずっと生きられるんだから、毎日天国。ガンガン仲間を増やしちゃえばいいのに。」
萩尾先生「人間の愛に未練があるんですよ。」
なんか、ここ、じーん‥としてしまいました。

まず、萩尾先生がエドガーを描いた段階で、「一番値が高い状態です」(八巻さん)。その後西原さんがメリーベルを描きます。ここでは割愛させていただきます。『スペリオール』でご覧下さい。
ここで第一部終了。15分休憩です。
音楽
・第二部登場-萩尾先生、西原さん、八巻さん:山下達郎「愛を描いて~Let's kiss the sun」
・第二部登場-ヤマザキマリさん、伊藤理佐さん:山下達郎「SPARKLE」

第二部からヤマザキマリさん、伊藤理佐さんのお二人が登場されました。画力対決には何度も登場しているお二人が、西原さんだけが敵役というリスク分散のため、助っ人として登場していただいた模様です。

八巻さん「お二人とも萩尾先生が大好きなので、観に行きたいと言ってきたので、じゃあ出てよ、という流れなんですけど。こんなに上品なていねいな回は初めてです。いつもはもっと下品なんです。客層が違うんでしょうね。」
ヤマザキさん「2階から観てて、二人で手に汗握って、“ヤバイよ、これ”って。」
伊藤さん「全然緊張しないで来たのに、2階で震えてて。」
ヤマザキさん「二人で急になんか冷や汗とかあぶら汗浮かんできて。ちょっと、どうする?って。」
伊藤さん「前もって検索しとくか、みたいな。」
ヤマザキさん「でも、お互い、やめようって言ってやめたんだよね。恥をかくなら、二人一緒に。」
伊藤さん「絶対、11人描かされるよね。検索……やめましょう、と。」
ヤマザキさん「やめましょう、と。」
レポート
13.お題「モトちゃん」→単行本

モトちゃん

森に住んでいるオリーブ色の妖精です。ソバージュじゃないです。みなさん、ご存じないですね。さすがにマニアックか。

伊藤理佐さんは萩尾先生の自画像の方と勘違いされています。

キャラクターなので、モトちゃんは出ると思ってましたが…
14. お題「11人いる!」→赤本の表紙登場人物一覧

「11人いる!」

八巻さん「「11人いる!」のキャラクターを一人ずつ描いていただきます。まず萩尾先生に描いていただいてから、一人ずつ描いていただきます。」
萩尾先生「あまり目立ってないやつを描きます」(←おやさしい萩尾先生)

萩尾先生:トト、ドルフ、チャコ(←絶対、トトを描くと思ってた…)
伊藤さん:グレン・グロフ、王さま、タダ
ヤマザキさん:ヌー、フロル
西原さん:ヌー、フォース(←ヌーがダブってます)
萩尾先生:ガンガ、アマゾン
15. お題「美味しんぼ」~海原雄山(萩尾先生)

「美味しんぼ」~海原雄山

八巻さん「なんか、ちょっと悪そうですよね。義息子をやっちゃいそうな。」(グレッグっぽいと言いたいらしい)

ここでゲストへの質問。萩尾先生の好きな作品を三つあげて下さい。

・ヤマザキマリさん「「ポーの一族」「トーマの心臓」と最初の頃の「ケーキ ケーキ ケーキ」です。」(「ケーキ ケーキ ケーキ」は若くして海外へ飛び出した女の子のお話なので、ヤマザキマリさんらしいですね!)

・伊藤理佐さん「私はケツがたくさん出てくる「残酷な神が支配する」。あと「少女まんが入門」に載ってた「マーマレードちゃん」は処女の少女の頃に見まして、すごい好きなんです。」

・西原さん「「A-A'」のほかに「百億の昼と千億の夜」がすごい好きでした。主役が何を言ってるのか全然わからなかった。最後まで誰と戦っているか、全然わからなくて、小説読んだら、もっとわからなくなった。阿修羅がカッコいいなあって。」(と話している西原さんの顔が、すっかり少女のようでした。)

・八巻さん「「半神」と「アメリカン・パイ」「ゴールデン・ライラック」「トーマの心臓」ですね。「アメリカン・パイ」は読んだら100%泣くんで。当時(ドン・マクリーンの)レコードがなくて、タワーレコードで探しました。」
16. お題「進撃の巨人」の50m級

進撃の巨人

西原さん「ほら、かっこいいでしょう。」
伊藤さん「なんか、渡してるペンが違うんじゃないですか?」(違いません。)

諫山創氏には「絵が自信がないから」と画力対決の出演は断れれたそうです。
そう言えば、萩尾先生は「進撃の巨人」の11巻は入手出来たのでしょうか?
17. お題「ゴルゴ13のラストシーン」

「ゴルゴ13」のラストシーン

八巻さん「『ビッグコミック』45周年でゴルゴはみなさんに描いていただいたので、ゴルゴのラストシーンを」
萩尾先生は筆ペンと赤いサインペンを使っています。
ゴルゴ13は最後、娘のゴル子に殺され、死の直前にゴットファーザー的に仕事を引き渡すというストーリー。ゴルゴ13とゴル子は眉が似ています。
18. お題「トーマの心臓」を4コマにまとめる

「トーマの心臓」4コマ

このお題を言い出すときの八巻さんが、内心でドキドキしてるのが伝わります。
萩尾先生は(四コマ?)と言われ、びっくりして、目をパチパチされてます。

「トーマの心臓」とは。
優等生のユリスモールがおかたくて、
心を開かせたいオスカーだが、
明るいエーリクに横どりされて、
ユーリははればれと神学校へ(バイ~)。んでトーマは?

村上知彦さんが萩尾望都作品集第1期の「トーマの心臓」のあとがきで、“オスカーとエーリクのユーリへの失恋物語である”と書かれておられましたので、納得です。一方“トーマとユーリの愛の成就の物語でもある”とも。

素晴らしい。これを描いていただいただけでも、画力対決をやったかいがあったというものですね。
19. お題「ポーの一族」のれんまん

「ポーの一族」のれんまん

だんだん汚れていく流れで、萩尾→ヤマザキ→伊藤→西原の順で一コマずつ、と言ってたのですが、いきなり題字を西原さんが描いた段階で、逆向きになりました。萩尾先生に最後きれいにまとめてもらった方がいいなと。

…と時が過ぎて/小鳥の巣へ…(つづく)
20. 会場からのリクエスト「セーラームーン」→公式サイト

セーラームーン

八巻さん「萩尾先生、セーラームーン、大丈夫ですか?」
萩尾先生「あ、多分、大丈夫。セーラー服着てるやつですよね。」
八巻さん「セーラー服、着てます。ちょっとキャバクラっぽいセーラー服ですが。」
西原さん「本番こういうのありそうなセーラー服です。」
萩尾先生「本番がありそうなセーラー服。」(なんか納得されています)。


(ヤマザキマリさんのセーラームーンがすごくセクシーなのを受けて出した萩尾先生のセーラームーン)
八巻さん「萩尾先生のはかわいいんですよ。」
ヤマザキさん「清純さを出さないとダメですね。」
伊藤さん「ちゃんと処女ですね。」
21. 合同色紙「オスカー」

オスカー

最初の萩尾先生のみの絵です。ここでやめておけば…。それが出来ないのが画力対決。

西原さん「ファンの方にはね、聖書に落書きされるようなもんですよねぇ。」

理佐さんが描いている最中、本当に会場からは「いやあああああ!」という悲鳴があがっています。西原さんが描いた線が萩尾先生のオスカーにかかったたときは、本気で「あー!」という悲鳴があがり、それに続いて「あーあ」という声が会場から上がりました。
西原さんは煙草を押しつけている絵を描いて、萩尾先生は赤ペンを貸してらしてました…。

西原さん「まさか萩尾先生の絵にラクガキする日が来るとはね…。子供の頃のことを考えると、やっぱり心が痛む。」
合同色紙2枚はチケットの半券から席で萩尾先生にひいてもらい、2名の方が当選されました。
八巻さん「おそらく最後の回になると思いますが、一番清潔な回が出来ました。本当にきれいな回です。」
ヤマザキマリさん「萩尾先生本当に絵を汚してしまって、すみません。西原さん、萩尾先生のときに呼んで下さり、ありがとうございます。明日イタリアに帰ります。いいおみやげが出来ました。」
伊藤さん「クソ汚れ漫画家で、すみません。ここにいるだけで少女漫画家として(え?少女漫画家だったっけ?)幸せです!ありがとうございました。」
萩尾先生「みなさん、今日は遠くから来ていただいて、本当にどうもありがとうございました。どれだけ笑いが取れるかという勝負どころであまりギャグが受けない私はどうすればいいのだろうと思ったのですが、みなさん、本当に笑っていただいて、本当にほっとしました。どうもありがとうございました。」
西原さん「子供の頃から神様のように読んでた人に、将来大きくなって、顔につばをはくようなことをすることになるとはまさか思いませんでした。これ以上でっかい敵はいないので、本当に最後の画力対決の締め方になったなと思います。これで、漫画界で一番強いヒールということで、悪名をとどろかせ満足です。本当に幸せでした。ありがとうございます。」


とても楽しく、夢のようなイベントで、ぼーっとしてしまいました。萩尾先生の生描きを見ることが出来ただけでも、幸せでした。八巻さん、西原さん、ありがとうございました。

※今回、萩尾先生以外、全員敬称は「さん」で統一しました。普段もそうしたいんですけど、なかなか出来ないんですよね…。

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