作品目録

夜の河を渡る

シリーズ・ここではないどこか 第22話

初出誌
「flowers」2011年5月号(2011.5.1) p107~124(18p)
登場人物
宇佐見:作家。
百絵:宇佐見の作品の中の登場人物。小顔。
俊彦:宇佐見の作品の中の登場人物。
一郎:宇佐見の作品の中の登場人物。
五十嵐:トマト出版の編集者。
生方正臣:作家。
あらすじ
トマト出版の編集者・五十嵐が担当している作家・宇佐見は電話も出ない、メールに返事もない。心配した五十嵐は宇佐見の住む中野のマンションへ行く。その頃、宇佐見はまさに自分の作品の中で「遭難」していた…。
コメント
作家の産みの苦しみをわかりやすく描いた、非常におもしろい作品です。物語に行き詰まって苦しんでいると、夢の中に登場人物が勝手に出てきて、いろいろなことを勝手に言ったりしています。キャラクターが自分の思っている想像を超えて色白だったり天パーだったりするところが、興味深いです。うまく行くと「キャラクターが勝手に動き出して物語を進めてくれる」とはよく聞く話ですが、逆もあるのでしょうね。キャラクターに任せているとしっちゃかめっちゃかになる。この物語はそれに近い感じです。
最終的にこの作家は自分の内面を見つめ直し、自身が信じているもの、欲しているものをつかんで、それを物語に反映させます。それを「河を渡る」と絵で表現されています。物語を創作をする方にはよくわかるんじゃないでしょうか?

2011.3.28

春の小川

なのはな