作品目録

学校へ行くクスリ

 

初出誌
「ビッグゴールド」1994年第16号(1994年3月17日号) p151~190(40p)
登場人物
別海カツミ:高校1年生。
中川マユミ:カツミのクラスメート。
甘木:カツミの中学のときからの同級生。
別海父:出張と称して家に帰らないカツミの父親。
別海母:カツミの母親。
あらすじ
高校1年2学期の最初の日、カツミには父親はワープロ、母親は電気ジャーに見えてしまった。学校へ行くと、なんだかみんな違う物になって見える。授業が始まると、今度は耳までおかしくなったようで、先生や級友が宇宙語を話していてよくわからない。
そんな中で以前から気になっていたクラスメートの中川マユミだけは人間に見える。中学のときからの同級生でバードウォッチング同好会を作っている甘木も人間に見える。けれど、それ以外の人が人間に見えなくなったり、言葉がわからなくなったりするのが次第にひどくなっていき、授業にもついていけなくなる。
カツミは中川が学校を3日も休んだので気になって、見かけたという噂のあるサンシャイン通りをうろつく。すると映画館から中川が出てくる。学校に行きたくないという話を二人でしていると、中川が「学校に元気に行くクスリ」というドロップを出してカツミにくれた。
飲むと頭がクリヤーになり、世界が元に戻っている。ところが中川の髪が花だらけになって見える。その中川は甘木に紹介するとなぜか嫌っているようなそぶりを見せる。が、二人だけで話をしているところを見かけてしまう。中川の態度は好意の裏返しかと思い、カツミは腹を立てる。
カツミはクスリを飲んで頭がクリヤになっているうちに成績をあげて甘木と中川を見返してやろうと猛勉強を始める。成績はどんどんあがり、優等生として扱われるようになると、学校は勉強さえしていればクリーンな無菌室だということに気付く。
そんな甘木が丹沢で遭難したというニュースが入ってくる。中川から電話が入り、甘木の安否を心配しているようで、放っておけないとおもったカツミは中川のマンションへ行く。そこで中川が甘木やカツミとの関係でカツミが知らないことを話し出す…。
コメント
ファンタジックな作品です。学園ものですが、家族の問題を扱ってもいます。親の不仲が原因で、少年がドロップアウトしてしまう話なのですが、本人がその自覚がなく、その分「世界がおかしく見える」というところが強調されていてます。好きな女の子だけはクリヤーに見えるのがわかりやすく寓話的です。落ちこぼれるときって、こんな感じかなと思いました。
カツミが見ている不思議な世界を表現した言葉に「エッシャー」というものが出てきました。エッシャーは不思議な絵を描く人です。構造上あり得ないだろうという絵や、この世にないような建築物で、「だまし絵」とも呼ばれています。世界がおかしく見えるというのはうつなどの神経症の症状として実際あり得そうです。この作品、今ならさしずめ「メンヘルもの」とか呼ばれるのかもしれません。
作品の舞台は池袋です。「午後の日差し」もそうでした。萩尾先生にとっては都内で一番身近な街なのでしょうね。

2010.8.18

収録書籍
イグアナの娘

イグアナの娘 プチフラワーコミックス 小学館 1994.7

イグアナの娘

イグアナの娘 小学館文庫 2000.12.10

萩尾望都パーフェクトセレクション 9 半神

萩尾望都Perfect Selection 9 半神 小学館 2008.3.2

入手しやすい本作品収録の単行本 イグアナの娘 小学館文庫(新版)

イグアナの娘 小学館文庫(新版) 2000.12.10

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午後の日差し

帰ってくる子