作品目録

半神

 

初出誌
「プチフラワー」1984年1月号(1984.1.1) p63~78(16p)
登場人物
ユージー:双子の姉。妹とは腰のあたりでつながっている。知能は高いが、容貌は美しくない
ユーシー:双子の妹。美しい容貌だが、知能は低い
双子の父:大学教授
双子の母
ドクター:双子の主治医
双子のおばさん
あらすじ
ユージーには、腰のあたりでつながっている頭の弱い双子の妹ユーシーがいる。そのためいっしょに歩くのも、妹の食事やトイレも、ユージーがこまごまと世話をしなければならない。おばさんたちは妹の美しさばかり褒めそやし、唯一の楽しみである勉強は妹にじゃまをされ、喧嘩をすれば父親に「知識はあっても、やさしい心はないのかい?」と諭されるように叱られて、ユージーのいらだちはつのっていく。
双子が13歳になったとき、ユージーにはユーシーを支えて歩く体力がなくなり、内臓の負担も大きくなって、二人に命の危険が迫っていた。そのため、ドクターは分離手術を行うことを提案した。そして…。
コメント
萩尾先生の短編の中でもっとも評価の高い、最高傑作と呼ばれる作品です。個人的には、16ページの漫画作品の中でももっともすばらしい作品なのではないかと思っています。感受性の豊かな人に読ませてみると、あまりの出来に驚かれ、恐れられます。これが16ページという圧倒されるそうです。
おそらく、野田秀樹氏も圧倒されたのだと思います。そして大きくふくらませて舞台化しました。できあがった舞台は作品まるで違うものなので、別ものとして見た方が良いと思いました。が、野田秀樹氏がきちんと萩尾先生を脚本に迎えられているので、機会があったら見た方が良いと思います。私は深津絵里主演時に観ました。
なお、CD-ROM「sanctus」の監督をつとめられた映画監督・脚本家の佐藤嗣麻子さんは、ロンドンの映画学校の卒業制作として「半神」を取り上げられ、その許可を萩尾先生が快く出されたことがきっかけでお知り合いになられたそうです。この卒業制作の短編映画は「萩尾望都原画展」で流され、初めて拝見することができました。

2011.10.28

収録書籍
萩尾望都作品集・第二期 第9巻 半神

萩尾望都作品集・第2期 9 半神 小学館 1985.3

半神


半神 小学館文庫(新版) 1996.9

萩尾望都パーフェクトセレクション 9 半神

萩尾望都Perfect Selection 9 半神 小学館 2008.3.2

好きです、この少女まんが。5 異彩

好きです、この少女まんが。5 異彩 講談社 2011.12.13

投稿
萩尾作品には、デビュー作から「双子」や双子のバリエーションとしての「クローン」が多く登場しますが、この作品がもっともはっきりと「双子ゆえの葛藤、複雑な愛憎」を中心に据えて「双子」を描いています。
ユージーのモノローグを多用し、短いページの中にいろいろな思いや、決して短くはない時間の移り変わりが凝縮されて表現されており、その濃度の濃さと、最後のページで迫ってくるように伝わるユージーのユーシーへの思いが、胸をつきます。
この作品の2年前に発表されたファンタジー「モザイク・ラセン」に脇の脇というような役で登場した「くっついた双子の兄弟」(兄は醜く魔法を使える・弟は美しく何もできない)をかいていらっしゃるうちに、「あれっ?これでまた話ができるじゃん」ということで、できた作品だそうです。小さな役の設定から、どうやって話を組み立て、深めてこの作品になったのでしょう。
劇団夢の遊眠社により、舞台化されました。初演は1986年。
その際には、1977年にアメリカのSF作家レイ・ブラッドベリの短編を漫画化した作品「霧笛」からの「…その声をつくってやろう。…」という美しい文章もとりいれられています。

文:まいが 1999.3.17

4/4カトルカース

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