作品目録

モザイク・ラセン

 

初出誌
「プリンセス」1982年9月号 1982.9.1 p9~56
「プリンセス」1982年10月号 1982.10.1 p151~195
「プリンセス」1982年11月号 1982.11.1 p219~259(扉裏広告)
「プリンセス」1982年12月号 1982.12.1 p243~275(扉裏広告)
登場人物
白川美麗(シラカワ・ミラ):女学校の寮で暮らす。父親は考古学者。
ラドリ・マッキャベリ:ミラの夢に出てくる少年。
バーダ・マニ・ハナ:ミラを保護しようとする男。
フォリン:マニ・ハナに仕えるオオカミ。
ドクター:地球外から来たカメレオン。密入国者だが空間移動のベテラン。
サマティ:美麗の友達。
ポルダ:美麗の友達。
リンゴ:ラドリを撮影したカメラマン。
センジとリーマ:楽師。
黒のライガン王:異次元の世界の王。前王を殺害し、その王妃と結婚。後に王妃も殺害した。
ダダ王子:王だった父をライガンに殺された王子。
チョイスン:ダダ王子の養育係。
ララニーア:ダダ王子の婚約者だったが15歳で亡くなった。
スピカ:ララニーアの妹。
シェジュ:天羽を呼ぶ力をもつシャム双生児。
あらすじ
ミラはロンドン郊外の女学校に通い、寄宿舎に住んでいる。ミラが初めてその少年の夢を見たのは8歳のときだった。ミラの成長に伴い、彼も成長し、そして夢の中で彼が火事で緑色の人間に襲われているのを見た。彼とそっくりな少年を雑誌で見かけ、ミラはその雑誌の出版社を訪ねる。
すると、ラドリを撮影したというカメラマンが彼の住むホーブへ一緒に行ってくれることになった。ミラの予想通り彼の家は火事で焼け、両親は死んでいた。病院に行くと、ラドリは口をきかなくなっていた。父親の古い友人だというマニ・ハナと名乗る男が彼を引き取るという。ところが病院でラドリは消えてしまった。
ミラはマニ・ハナに導かれ、急ぎラドリを連れ戻そうとするが、ラドリとともにラセンを通って異次元へ飛んで行ってしまう。その世界は三つの太陽があり、以前ミラが夢で見た風景だった。
この世界では「食」が近づいていて、そのときは三つの太陽が六つの月に隠れてしまう闇の昼がやって来る。黒のライガン王が「食」を恐れて天羽を使ってラドリを呼んだらしい。ダダ王子、スピカ、センジとリーマは「食」への生け贄を増やそうとする王の暗殺を目論見、ラドリやミラ、彼らを連れ戻しに来たドクターは巻き込まれてしまう。
王はかつてラセンの夢魔を呼び寄せて、人の悪夢を操り権力の座にたどり着いたが、王の命は「食」まで。「食」の闇によって、王はラセンの悪夢に引きずり込まれることになる。それを避けるため、宝石にミラを閉じこめる。宝石の光によって悪夢は王を引きずり込めなくなるからだ。
宝石はラセンの結晶体だから、解くことが出来る。ラドリがこの世界に来たときに一緒に飛んできた「音叉」によって発せられた「A音(444ヘルツ)」によって宝石が解かれ、王は悪夢に引きずり込まれる。
ミラ、ラドリ、ドクターがラセンを通って元の世界に戻ろうとすると、黒の王の悪夢が追いかけて来るが、マニ・ハナの助けにより、何とか逃げ切った。元々ラドリは強力な超能力を持っていたため、黒の王に目をつけられ、彼の両親や家が緑色に浸食されたのだ。マニ・ハナは別の世界の生命体とその空間をつなぐラセンを感知したり、そのラセンに出入り出来る能力者を探していた。マニ・ハナはラドリを保護し、能力をコントロールする方法を教えるという。
ミラはロンドンに帰り、元通り女学校での生活を過ごしている。すると、ラドリが訪ねて来る。ミラをデートに誘うが、緊張のせいか、二人とも宙に浮いてしまう。ラドリが能力をコントロールできるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。
コメント
秋田書店『プリンセス』に発表された萩尾先生のSF中編です。秋田書店と言えば『週刊少年チャンピオン』に「百億の昼と千億の夜」を連載して以来の連載です。ラセンを通っての異世界との行き来がテーマで、舞台は現代のロンドン郊外、少年と少女が主人公で、若干オカルトチックな面もあり、少女漫画向けのSFに仕上がっています。異世界のファッションは、やはり古代アラブ風というか、中近東っぽいところが、「銀の三角」「マージナル」に通じています。
この物語の中でシェジュという名(一つしかない)のシャム双生児の天羽(能力者)が登場します。兄弟で、弟は美しいのですが、何も話せず、兄はカサカサで包帯を巻いています。二人はラセンを通れば分割できると言われ、試みますが、黒の王の悪夢のせいで二人とも死んでしまいます。彼らは後に姉妹に姿を変え、「半神」に登場します。

2010.7.5

収録書籍
モザイク・ラセン


モザイク・ラセン 秋田書店 1983.5.30

萩尾望都作品集・第二期 第15巻 モザイク・ラセン

萩尾望都作品集・第2期 15 モザイク・ラセン 小学館 1986.4

モザイク・ラセン(プリンセスコミックス)

モザイク・ラセン プリンセスコミックス 秋田書店 1994.5

モザイク・ラセン(秋田文庫)

モザイク・ラセン(秋田文庫) 秋田書店 1998.12.10

入手しやすい本作品収録の単行本 モザイク・ラセン(秋田文庫)

モザイク・ラセン(秋田文庫) 秋田書店 1998.12.10

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