作品目録

春の骨

メッシュシリーズ 4

初出誌
「プチフラワー」1981年春の号~夏の号
前編:1981年春の号(1981.5.1) p137~186(50p)
後編:1981年初夏の号(1981.7.1) p89~138(50p)
登場人物
メッシュ:両脇だけ白銀という二色(メッシュ)の髪をもつ金髪の少年。
ミロン:贋作画家。メッシュを拾って面倒を見ている
ジェルダン:前衛演劇の演出家
ココ:劇団の主演女優。ジェルダンの恋人
ユーベル:劇団の俳優。ジェルダンに好意をもっている
オルガ:ジェルダンの別居中の妻
ピエール:モンマルトルのバーの店主
ルイ・シラノ:メッシュと同じアパートに住む医師
舞台
現代のパリ,サンジェルマン,モンマルトル,地下鉄
あらすじ
ベルナール通りのミロンの部屋に突然見知らぬ女がやって来る。引っ越し先と間違えただけで、そのまま向かいのアパートに入った。彼女はココという名でアングラ演劇の女優だった。劇団の演出家ジョルダンが背景画となる幕の絵を描く人物を探していたところだったため、ココはミロンに依頼する。
ミロンはミギ通りにある地下劇場へメッシュとともに向かう。メッシュは絵の手伝いをしていたが、ジョルダンが突然メッシュを舞台にあげる。インスピレーションがわいてきたジョルダンは、メッシュに死神の役を、ミロンにメッシュの黒いタイツに骨を描き入れるよう依頼する。
舞台に上がるなんて、と一度は断るが、やむを得ず引き受けたメッシュだったが…
コメント
「メッシュ」第3作。今回からメッシュがパリの様々な人々の中で生きる姿が描かれていきます。まずはアングラ演劇。70人入る劇場でやるとメジャーと言われてしまう世界。かつてあった才能を枯渇させて、ヘロインに走る演出家と彼を取り巻く人々の中へ放り込まれるのです。
冒頭に出てくるシャガールの「嘆きの壁」が重要なモティーフです。イスラエルにあるあの壁を描いた絵ですが、何故かメッシュはたいへん気に入ったようで、この絵の模写の中に自分を書き入れるようミロンに頼みます。
芝居がヒロインの自殺で終わっていることに疑問を抱くメッシュ。どんな絶望があっても憎しみが強すぎて死ぬなんて考えられなかった、と回想する場面がありますが、ここで寄宿舎を出てからのメッシュが何を考えていたかがわかります。
パニックによる幻覚の中で「誰も愛していない自分は怪物だ」と思い込み、劇薬を飲んで自殺しようとします。それでも、ミロンへの小さな感謝の思いがメッシュを外へ誘い出します。狂気のような暗い情景が一転して美しい風景へと変わり、そこはまるで「嘆きの壁」の絵の中のよう。緑の壁の色が見えてくるような気がしました。
メッシュにとってミロンとは、こういう存在なのかなぁ、と。メッシュを地上にとどめておく一筋の道のような…そんな気がしました。
「何かあったら街中気が狂ったように走り回ってないで、下宿に帰って来い」というミロンのさりげない言葉は「ここがお前の家だ」と言っているようで、相変わらずいい味出してます。
収録書籍
春の骨 メッシュ2


春の骨 メッシュ2 小学館 1982.1


萩尾望都作品集・第二期 第12巻 メッシュ 2

萩尾望都作品集・第2期 12 メッシュ 2 小学館 1985.9

メッシュ 第1巻

メッシュ 第1巻 白泉社文庫 1994.12

萩尾望都パーフェクトセレクション 4 メッシュ I

Perfect Selection 4 メッシュ I 小学館 2007.10.1

ブラン

A-A'