作品目録

訪問者

 

初出誌
「プチフラワー」1980年春の号(創刊号)(1980.5.1) p329~428(100p)
登場人物
オスカー・ライザー
グスターフ・ライザー
ヘレン・ライザー
刑事
ミュラー
あらすじ
「トーマの心臓」のオスカーが学校(シュロッターベッツ)に来る前のお話。オスカーの父・グスターフと母・ヘラと現シュロッターベッツ校長・ミュラーの3人は学生時代の友人同士で、ヘラはグスターフを選んで結婚したが子供ができず、ミュラーの子を産んだこと。薄々感づいていたが知らん顔していたグスターフがそのことを告げたヘラを殺して逃亡したこと、等が既に「トーマの心臓」の中で語られていた。その逃亡の旅における父子(と犬)の1年間を季節と場所を美しく描きながら物語は進められる。
コメント
親と子のドイツをめぐる旅がまるでロード・ムービーのようです。漫画の実写化はあまり好きではありませんが、この作品だけは映画でみたいと思いました。もちろん、ドイツ人の俳優で。
オスカーが学校へ来たとき、グスターフを追いかけるオスカーの場面までしっかり「トーマの心臓」と同じです。既にこのお話の大筋は「トーマの心臓」の段階で出来上がっていたと思われます。さらにいうなら、「11月のギムナジウム」の頃までさかのぼれるかもしれません。実現化するまで何年も暖めていたのでしょう。
ユリスモールの出会いの場面ですが、「トーマの心臓」では最初っから大人びた少年であるオスカーが「訪問者」ではちゃんと子供らしく泣いている点が特に感動します。なぜオスカーがユーリを愛しているのか、よくわかります。
このオスカーという人物が最初に登場したのは「花嫁をひろった男」なので、1971年のことです。その後もちょこちょこと登場する初期萩尾作品の主要キャラクターで、人気も高い人物です。この「訪問者」では初めての主役ですが、この作品を最後にオスカーは登場しなくなります(その後、イラストでは登場します)。
「いつも家にいることの出来る子供でありたい」という願望は子供が自らの存在意義や安心感をを求める、ごくあたりまえな欲求を端的に表現したものです。オスカーはパパとママが落ち着いて暮らす自分の家をもっていました。それが失われてしまい、その後はずっと寄宿舎暮らしだったのでパパとママとの一つ屋根の生活を得ることは二度と出来ませんでした。しかし、この後、自分をまるごと受け入れてくれる人物を得ることは出来ました。それが救いです。
大好きな作品の一つですが、20歳頃ハードカバーで読んだのが最初でした。そのときも心から感動しましたし、その後も時折読んでいましたが、もったいなくてあまり頻繁には読むことができません。今回、何か胸がしめつけられるような気がしました。年をとって気持ちが弱くなっているのかもしれません。「パーフェクトセレクション」には別冊として「湖畔にて」がついていました。泣いていたオスカーの後、たくましくなってエーリクを訪ねるオスカーが見られるので、余計にそうなのかもしれません。

2010.6.24

収録書籍
訪問者


訪問者 小学館 1981.4

萩尾望都作品集・第二期 第8巻 訪問者

萩尾望都作品集・第二期 8 訪問者 小学館 1985.5

訪問者


訪問者 小学館文庫(新版) 1995.9

萩尾望都パーフェクトセレクション2 トーマの心臓II

Perfect Selection 2 トーマの心臓II 小学館 2007.7.31

入手しやすい本作品収録の単行本 訪問者 小学館文庫(新版)

訪問者 小学館文庫(新版) 1995.9

amazonで購入する

ラーギニー

酔夢