作品目録

百億の昼と千億の夜

 

初出誌
「週刊少年チャンピオン」1977年第34号~1978年第2号
序章~第1章 :1977年8月15日号 9(34) p75~107(32p)
第1章 アトランティス幻想:1977年8月22日号 9(35) p155~186(32p)
第2章 悉達多:1977年8月29日号 9(36) p85~105(21p)
第3章 梵天 帝釈天:1977年9月5日号 9(37) p155~174(20p)
第4章 阿修羅:1977年9月12日号 9(38) p199~218(20p)
第5章 弥勒:1977年9月19日号 9(39) p227~246(20p)
第6章 ユダとキリスト:1977年9月26日号 9(40) p219~238(20p)
第7章 ゴルゴダの奇跡:1977年10月3日号 9(41) p245~264(20p)
第8章 トーキョー・シティー:1977年10月10日号 9(42) p261~280(20p)
第9章 戦士たち:1977年10月17日号 9(43) p259~278(20p)
第10章 “シ”を追う:1977年10月24日号 9(44) p259~278(20p)
第11章 ゼン・ゼン・シティー:1977年10月31日号 9(45) p261~280(20p)
第12章 コンパート・メント:1977年11月7日号 9(46) p259~278(20p)
第13章 ユダの目覚め:1977年11月14日号 9(47) p261~280(20p)
第14章 トバツ市で待つもの:1977年11月21日号 9(48) p247~266(20p)
第15章 摩尼宝殿入り口:1977年11月28日号 9(49) p139~158(20p)
第16章 アスタータ50:1977年12月5日号 9(50) p241~260(20p)
第17章 幻の軍勢:1977年12月12日号 9(51) p259~279(21p)
第18章 続・幻の軍勢:1977年12月19日号 9(52) p259~278(20p)
第19章 遠い道:1978年1月1日号 10(1) p135~154(20p)
終章 百億の昼と千億の夜:1978年1月2日号 10(2) p261~280(20p)
登場人物
阿修羅王:天上界に攻め入り、4億年もの間戦っている。「戦士」
オリオナエ(プラトン):アトランティスの司政官。過去と未来に旅する「道標(みちしるべ)」。
悉達多(シッタータ):釈迦国の王子だったが出家して梵天の元へ向かう。「戦士」
イエス:ナザレのイエス。ヨルダン川のほとりで大天使ミカエルに会い、天啓を受ける。
ユダ(首相):イエスの弟子でイエスを告発する。その後記憶をなくし、ゼン・ゼン・シティーの首相を務めるが、シッタータらをアスタータ50へ導く役割を果たす。「信号」
梵天王:兜卒天のトバツ市にいて、天上界を統率する。
帝釈天:兜卒天を守護する。
弥勒:救世主。兜卒天のトバツ市の地下にある摩尼宝殿にいる。
転輪王:唯一神、造物主。一兆年生きている。誰も転輪王に会ったことはない。
目次
序 章 天地創造 7p
第 1章 アトランティス幻想 57p
第 2章 悉達多 21p
第 3章 梵天 帝釈天 19p
第 4章 阿修羅 20p
第 5章 弥勒 20p
第 6章 ユダとキリスト 20p
第 7章 ゴルゴダの奇跡 20p
第 8章 トーキョー・シティー 20p
第 9章 戦士たち 20p
第10章 “シ”を追う 20p
第11章 ゼン・ゼン・シティー 20p
第12章 コンパートメント 20p
第13章 ユダの目覚め 20p
第14章 トバツ市で待つもの 20p
第15章 摩尼宝殿入り口 20p
第16章 アスタータ50 20p
第17章 幻の軍勢 40p
第18章 遠い道 20p
終 章 百億の昼と千億の夜 20p
あらすじ
●アトランティス
アテナイの賢者プラトンはアトランティスの夢を追いかけていた。サイスの神官がアトランティスに関する古文書を持っているというので訪ねると、その古文書には「オリハルコン」という言葉が記してあった。さらに、海岸地方のエルカシアという村落にアトランティスの子孫と言われる人々が住んでいると聞き、足を伸ばす。プラトンは彼らが長年待っていたその人だと言われる。
エルカシアにはグラウスという光を通す透明な物やタウプという夜になると光る物体があり、見たこともないものばかりでプラトンは驚く。宗主の元へ案内されると、そこには「オリハルコン」があった。そこで宗主の啓示を受ける。プラトンは過去と未来へ旅すると告げられ、未来へは一人で行って戦士を探せ、そして過去へは連れて行ってくれると。
気を失ったプラトンが目覚めたとき、そこはアトランティスだった。プラトンは自分がアトランティスの司政感オリオナエであることを知る。そこはポセイドン神にアトランティスを10日以内に移動させるよう告げられた直後のアトランティスだった。市民はアトランティスを離れることを受け入れられず暴動が起こることが予想され、移動は無理とオリオナエはポセイドンに報告する。
そこでオリオナエはアトランティスの建国の理念を述べさせられる。
「新星雲記」「双太陽青93より黄17の夏、アスタータ50における惑星開発委員会は「シ」の命を受けアイ星域第三惑星にヘリオ・セス・ベータ型の開発を試みることになった。これによって惑星開発委員会が原住民に与える影響、すなわち「神」としての宗教の発生…
そこで「神が実在であると説くより、なぜ惑星委員会が実在すると説かなかったのだ!」と叫び、気を失ってしまう。その間に、ポセイドン自身が市民にアトランティスを移動させると告知し、西の方から闇が迫り市街を飲み込んで行く。それに怒った市民が暴徒と化し火をつけた。炎の手前で闇は止まっていると言われた。
オリオナエは神殿に赴き、ポセイドンに事態を聞く。ポセイドンはアトランティスをすべて移動するつもりだったが、火のせいで不完全なまま停止してしまった。そのため、バランスを崩して移動も出来ず、元にも戻せなくなった。千年の実験が失敗したと告げられる。
そこで目が覚めたオリオナエは過去への旅が終わったことを知る。オリハルコンを受け取り、長い旅に出ることになる。
●シッタータ~梵天王、帝釈天、阿修羅王との対話
釈迦国のシッタータ王子は世の無常を感じて出家し、兜卒天の首都トバツ市にいる梵天に会いに行く。そこで梵天からシッタータを出家させるようし向けたのは自分である。今、天上界は阿修羅王により侵略され、危機に瀕している。阿修羅王は四億年もの長きにわたり帝釈天と戦い続けている。阿修羅王から弥勒(救世主)のいる摩尼宝殿を守り、来世のために救済の道を切り開くのがシッタータの命題であると告げられる。
シッタータは阿修羅王が何故天上界に攻め入ったのか、何故破滅を繰り返すのか、願いはないのか、聞いてみたいと思う。そこで阿修羅王との会見を帝釈天へ願い出る。和平の道も途絶え何万年も使っていないが、一つだけ通信回路があると答え、そこへシッタータを導く。
シッタータは阿修羅王に「弥勒に会え」と言われる。弥勒は56億7千万年後の末法の世に現れ、苦しむ人々を救い、楽園が訪れると言う。では、その末法の世にどのような破滅が起きるのか、弥勒は知っている筈なのに、それを説明しないのはおかしい、救世主ならば破滅の到来を防ぐべきだると語る。
末法とは一切の無。その後にはどんな変化も起こらない終末。凍る星や死の空間に現れている荒廃は梵天王や帝釈天の言うことと異なり、阿修羅王のせいではない。それは造主物である転輪王の企てではないかと疑っている。造主物が宇宙を作ったのだから、破滅させることも可能である。弥勒は本当に救ってくれるのか信じて良いのか、転輪王と弥勒がともに破滅への道を歩ませているのではないかと考えている。
シッタータは阿修羅王の言うとおり、弥勒に会って本当に救いはあるのかと問うてみようと思い、トバツ市に戻る。阿修羅王に案内され、弥勒の元へ行くが、そこにはつくりものの像しかない。ある日兜卒天に現れた大きなものが末法の世と救いを預言して去った。そしてその正体不明のものの実際の姿を写して像を作り、その信仰を宇宙に広めたのだと阿修羅王は語る。そのときが来たら再び現れてこの世の命運を決するのが弥勒である。
シッタータは婆羅門の元へ戻り、阿修羅王は再び戦いに赴く。
●ナザレのイエス~ゴルゴタの奇跡
マリヤは男の子を懐妊し、その子はメシア(救世主)であると精霊に告げられた。旅の途中、ベツレヘムの馬屋で男の子が誕生する。東方より四人の博士がやって来て幼子イエス・キリストの誕生を祝した。それを聞いたヘロデ王は自分以外にユダヤの王が誕生したのかと不安にかられ、ベツレヘムの2歳以下の男児をことごとく殺した。マリヤは夫ヨゼフとイエスを連れてエジプトに逃れた。イエスの誕生を祝し、エジプトに逃れさせた東方の四博士は惑星委員会の指示に寄るバラモンたちだった。
成長したイエスはナザレで父と同じく大工をしていた。ヨルダン川のほとりで大天使ミカエルに会い、イエスは救世主であり、それが惑星委員会から与えられた使命であると啓示を受ける。イエスは民を救うため「神に懺悔し、祈らないと最後の審判が来て神に裁かれる」と布教を始める。11人の弟子を連れているところへイスカリオテのユダに出会い、イエスの言葉に惹かれ、ユダも弟子になる。イエスと12人の弟子は各地で教えを説き、奇跡を起こして行った。
ユダは幼い頃、神の怒りにふれて海に沈んだソドムとゴモラの街を見たことがある。以来「神は人間を裁くものなのか?」という疑問をもっていた。ユダは最初から「神が裁く」というイエスの教えに疑問を抱いており、その不安は次第に強いものになっていく。
危険だという弟子の忠告をきかず、イエスはユダヤ教の大司祭のいるエルサレムに赴く。大司祭らは民衆に人気のあるイエスを恐れ排除しようと考える。エルサレムでユダはイエスを裏切り、彼を大司教ら売る。それをイエスは待っていた。ユダは裏切り者と言われ続けることになる、と。すべては予定されていたことだった。
イエスはエルサレム総督の前で教えを説き、それが危険思想と言われ、磔にになる。それもまた予定されていたことだった。そして、磔になったゴルゴタの丘で奇跡が起きる。ナザレのイエスは大天使ミカエルの元へ。「シ」の令を受けた惑星開発委員会の計画は成功し、地球は最後の審判に向かって長い懺悔の時期に入る。イエスは新たに地球を管理するよう命じられる。
ユダは思考をコントロールされ閉じこめられた。阿修羅とシッタータは姿を消し、オリオナエは生き続けて戦士との出会いを待っている。
※作品中は「ゴルゴダ」となっていますが、ここでは「ゴルゴタ」にしておきます。
●未来~トーキョー・シティ
シッタータは海底で魚人に姿を変え、生き延びていた。何も考えず、腹が減れば魚を捕らえ、疲れては海底ポッドで眠っていた。ある時、「使命を思い出せ」という声が内部から聞こえてきた。そこで海からあがり、遠くに見える塔に行く。
塔の入口には「2902年トーキョーシティ」と記されていた。内部では30人ほどの人間が生きており、オリオナエもその中にいた。現在は3905年。オリオナエはシッタータに地球の衰退について語る。2900年、世界の平均気温はマイナス69度まで下がった。その後原因不明の乾燥期がやってきて砂漠化していった。そして地球だけでなく銀河系全体にその衰退がやってきていることがわかった。約1000年の間に、地球はすっかり死の星になってしまった。そのような衰退がたった1000年で起きるはずがない。それは「シ」の命を受けた惑星開発委員会の仕業だった。
オリオナエが生き続けたのは「戦士」すなわちシッタータと阿修羅が現れるのを待っていたからで、イエスがずっとオリオナエを見張っていた。今、イエスはシッタータに攻撃をしかける。そのとき、阿修羅が現れ、イエスに「シ」はどこにいる?と問う。イエスは阿修羅らを超震動で攻撃し、みな分解されたと思ったイエスは去る。阿修羅もまた土の中のポットで眠り、時を待っていたのだ。
オリオナエは「ヘリオ・セス・ベータ型の開発」とは「小さな海の分子から発展させて知的な生命体を生み出し、高度な文明を作る」開発だと語る。まさに地球の創世である。創世しておきながら、破滅させようとする「シ」の意志を問いたいという阿修羅。3人は破滅を止めるため戦うことにする。
彼らはイエスをロケットで待ち伏せして問う。「何故アトランティスを作って滅ぼしたのか」「何故地球に開発を行い、人間に知恵をつけて生きることを苦しみとしたのか」「何故宇宙を破滅へと向かわせようとしているのか」。イエスは亜空間通路を使って逃げ、3人は追いかけた。
●ゼン・ゼン・シティ
阿修羅、シッタータ、オリオナエはゼン・ゼン・シティに出る。そこは虚像の街だった。A級市民(人間)とB級市民(ロボット)に分けられ、A旧市民には個室が与えられ、B級市民は個室を求めて反乱を起こしている。A級市民の個室とは睡眠槽と呼ばれ、あらゆる物理・化学変化から守り、生命を原形質として維持する機構で、睡眠を続けている。だがロボットは夢を見ないので、個室は必要がない。市民は記号に還元され保護され、進化も発展もない。つまりここでは人間は存在せず、ゼン・ゼンを管理する首相だけが人間である。
首相が3人を個室に閉じこめようとすると、シッタータが「おまえもナザレのイエスと同じ「シ」の手下か?」と叫ぶ。「ナザレのイエス」という言葉がキーワードとなり、首相のコントロールが解ける。首相はイスカリオテのユダだった。
ユダはゼン・ゼンを破壊する。彼の使命は、シッタータらに「アスタータ50」惑星開発委員会の最終目的地入り口を示すことだ。ゴルゴタの丘で「アスタータ50」への道を知らせる信号をとらえたが、逆に委員会につかまり、コントロールされていた。
委員会は宇宙の各地の惑星で神に疑問を持ち行動を起こした戦士たちをとらえ、ゼン・ゼンに送り込み、ユダは彼らを一人ずつ睡眠槽の犠牲にしていった。よって目覚めた戦士はもうどこにもいない。アトランティスは最初の実験地で、地球は最後の実験地であるとユダは言う。つまり、すべての開発は失敗したのだ。
「アスタータ50」の入口は兜卒天トバツ市にある。
●再びトバツ・シティ
シッタータは四千年を経て再び兜卒天に向かう。破滅はさらに進んでいる。帝釈天とイエスは4人がやってきたことに気付く。
阿修羅は帝釈天がとらえる。帝釈天は「破滅は運命であり、来世浄土を信じて、運命を受け入れるほかはない」と語り、それに対し阿修羅は「運命に抗って戦うことが出来る」と答える。戦っても弥勒(創物主・絶対者)の前では無力であり、戦っても無駄である。殺すのはしのびない、もう戦いはやめようと帝釈天が申し出る。四億年以上もの間戦い続けていた相手の言葉に、阿修羅は涙する。
阿修羅以外の3人は帝釈天によって迷路に送り込まれていた。シッタータと阿修羅は互いに意図すればシンクロしてものを見ることができる。シッタータは帝釈天と阿修羅の前に現れ、帝釈天と話し合う。その間、オリオナエの行方を阿修羅が捜す。オリオナエはイエスにつかまり、摩尼宝殿の弥勒座像の手のひらの上にいた。シッタータと阿修羅は摩尼宝殿へ向かうが、もはや帝釈天は手が出せない。途中ユダも合流する。
弥勒座像のある摩尼宝殿でイエスは3人を待っていた。オリオナエを解放すると、イエスは消えてしまう。すると弥勒座像の目が開き、口が開き、立ち上がる。「アスタータ50」の入口は弥勒座像の開いた口だ。ユダは弥勒の手の間に入り、入口を確保する。急いで阿修羅、オリオナエが口に入るが、ユダは弥勒の手から出られない。手が合わさったとき、弥勒座像は爆破するからだ。ユダはシッタータに「神に会ってなぜこの世を滅びの道へ進ませるのか聞いてくれ」と託す。
弥勒の爆発により、トバツ市は消滅する。
●アスタータ50
阿修羅、シッタータ、オリオナエはアスタータ50にやって来たが、そこも荒廃が進んでいる。惑星開発委員会のビルに赴くが人の気配がない。開発に失敗し、彼らはすでに去って行ったのだ。何故開発は失敗したのだろう?それは人間が愚かだったからだ。繰り返される戦争、経済危機らを高度な文明をもっても人間は解決することが出来なかった、それが開発の失敗の原因だ。最初から人間は滅びの道を歩んでいた。
そこにまだナザレのイエスがいた。証拠隠滅のため、ビルの中を消して回っている。そしてまだ、光っている球体がある。それは弥勒や大天使ミカエルやポセイドンを映し出すもので、神は最初からおらず、人間の願望を映し出しただけだとイエスが言う。
阿修羅はヘリオ・セス・ベータ型の開発は最初から破壊と消滅にいたる開発であったことを理解する。太古に多くの惑星で生命が生まれ、進化し、知恵をつけていった。その生命の発展と進化を疎んだ開発委員会は、知的生命の発展段階で滅亡の必然性を加えていた。神は裁きなどせず、滅ぼすのが目的だった、と阿修羅は語る。
そこへ弥勒が現れ、ここは永劫の門、これより先の道はないと告げる。阿修羅は弥勒にどこから来たと問う。弥勒は宇宙の外側からと答える。次に弥勒が阿修羅に問う。阿修羅やシッタータ改造し能力を与え、時が来るまで眠らせたのは誰だと。その瞬間阿修羅は気を失ったように硬直してしまう。
阿修羅は弥勒の攻撃を受けるが、唯一の手がかりである球体を守ろうとする。阿修羅の目には過去の帝釈天との戦いが映し出される。弥勒の心理攻撃とわかっていても抗うことが出来ない。帝釈天に戦いの目的を問われ、誰の命を受けて戦っているのか思い出せそうになるが、怪我で目が覚める。シッタータらと合流し、球体を惑星委員会のビルの外に持ち出す。
阿修羅はシッタータに問う。誰の命を受けて戦っているのか。シッタータも記憶がない。オリオナエはおそらく反弥勒派の者だろうと予想する。
オリオナエは球体を分解し解析する。それは解析格子より無制限の量エネルギーが流し込み、新しい空間を生み出すことができる装置だ。その空間の座標はエントロピー「D」。アンドロメダ星雲の中にある。3人はそこへ向かう。
●D座標
D座標は虚数空間の中だった。急いでバリヤーを張るが、そのバリヤーを解くとすさまじいエネルギーが発生して爆発が起きる。するとマイナス・エネルギーが発生して、すべてが無に帰す。それを避けるにはオリハルコンが必要だったのだが、オリオナエはトーキョー・シティにおいてきてしまった。オリハルコンは閉鎖された熱エントロピーの世界をもち、格子を流れるマイナス・エネルギーのフィルタとして使えるはずだったのだ。
替わりに3人で作ることが出来るエネルギーで作れるフィルターは0.08秒。その時間内にバリヤーを解いて移動しなくてはならない。失敗したら、3人とも無に帰す。だが、0.08秒後に虚数回路を閉じるようセットしておけば、失敗しても残ったエネルギーが何とか1人は助け上げることができる。
3人はバリヤを解く。
●百億の昼と千億の夜
阿修羅とオリオナエの杖だけが復元でき、シッタータとオリオナエは消滅した。阿修羅はそこで自分に使命を与えた者の声を聞く。その者はこの宇宙に密かに予告を残し、戦士を選び、道を示した。生き抜くことへの戦いを願わずにはいられなかった。だが、はっきりとは言えなかった。その存在を「シ」に知られたら、この世は終わってしまうからだ。
その者の名は転輪王。この世界の外にいて、どこからか現れた惑星開発委員会が宇宙にしてきたことを見てきた。だが、この世を救うべき力になり得なかった。「シ」とは彼岸に住む超越者だ。二千億年すら外の世界の無限の広がりに比べればほんの一片に過ぎない。その無限の時を支配する超越者だと転輪王は語る。
転輪王は阿修羅にある幻を見せる。それを見た後でどうするか、元来た道を戻るか、先に進むのか自分で決めるよう言われる。
阿修羅は世界と同一になっていることを感じる。そこへ何か声のような者が襲って来る。「自然消滅に至る崩壊因子」を注入したという。それが何者なのか、自分たちは何なのか、阿修羅は自問する。世界の外に世界が、その外にも永遠に世界が続くのなら、戦いはいつ終わるのか?
オリオナエの杖をおき、阿修羅は歩き出す。
コメント
少女漫画家が少年漫画誌に進出。しかもこのような難解なSFで、と発表時は驚かれたのではないでしょうか?当時の『週刊少年チャンピオン』はいわば全盛期で「ブラック・ジャック」(1973~83)、「ドカベン」(1972~81)、「がきデカ」(1974~80)、「月とスッポン」(1976~82)、「マカロニほうれん荘」(1977~79)、「750ライダー」(1975~80)と人気作品が目白押し。1978年には200万部を突破して少年誌売り上げ第1位を獲得します。そんな時だからこそ、こんな冒険が出来たのかもしれません。当時私は萩尾先生の作品は『少コミ』では読んでいましたが、たいへん申し訳ありませんが、この作品は読みとばしていました。まだ幼すぎたのです。ご容赦ください。
先に「難解なSF」と言いましたが、よく読んで見ると漢字は多いものの、エンターテイメント性のあふれる作品になっています。長々あらすじを書き出してみましたが、それでよくわかりました。アトランティスを破滅させたポセイドン神も、天上界を末法に導く弥勒も、イエスに啓示を与えた大天使ミカエルも全部惑星開発委員会「シ」のメンバーです。それで、破滅へと向かわせる神(=惑星開発委員会)とオリオナエ、阿修羅王、シッタータ、ユダの4人は破滅を防ぐために戦っている、という話なのです。イエスや梵天は「シ」の使いであり、敵ですね。そう考えると実に少年誌にマッチしている物語かと思います。
子どもの頃、宇宙の外にまた宇宙があり、宇宙のすべてが宇宙の外にいる何者かに支配されているという想念が浮かぶことがありました。これが浮かぶと、本当に気が遠くなるのをよく感じました。だから浮かぶと消すように努めて大人になりました。当時、それはSFのベーシックな概念だったのかなと思いました。
原作は故・光瀬龍氏。阿修羅王が少女である点は原作と同じです。ユダは原作では天文学者であったのを、イエスの弟子とし、ゼン・ゼン・シティーの首相にしました。また、トバツ市における阿修羅王と帝釈天の問答も原作にはないシーンです。
しかし、この作品の成功は阿修羅王を中世的な少女の姿で描いた点が大きいように思えます。萩尾先生も数々の阿修羅王の姿をカラーで描かれています。それはそれは美しい姿です。

2010.6.10

収録書籍
百億の昼と千億の夜 1(少年チャンピオンコミックス)

百億の昼と千億の夜 1 少年チャンピオンコミックス 1977.11

百億の昼と千億の夜 2(少年チャンピオンコミックス)

百億の昼と千億の夜 2 少年チャンピオンコミックス 1978.1

百億の昼と千億の夜 1(秋田漫画文庫)

百億の昼と千億の夜 1 秋田漫画文庫 1980.6.15

百億の昼と千億の夜 2(秋田漫画文庫)

百億の昼と千億の夜 2 秋田漫画文庫 1980.6.15

百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜 秋田書店 1984.9

萩尾望都作品集・第二期 第1巻 百億の昼と千億の夜

萩尾望都作品集・第2期 1 百億の昼と千億の夜 小学館 1985.4

萩尾望都作品集・第二期 第2巻 百億の昼と千億の夜

萩尾望都作品集・第2期 2 百億の昼と千億の夜 小学館 1985.6

百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜 秋田文庫 1994.4

百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜 秋田トップコミックスワイド 2003.1

入手しやすい本作品収録の単行本 百億の昼と千億の夜

百億の昼と千億の夜 秋田文庫 1994.4

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参考情報
百億の昼と千億の夜(イメージアルバム)

マリーン

ゴールデンライラック