イベント

高崎シティギャラリーで萩尾望都先生のトークショーが開催されます。

萩尾望都SF原画展のレッド星2018年8月4日(土)、萩尾望都SF原画展群馬会場(高崎市美術館)で萩尾望都先生のトークショーが開催されます。

このイベントは往復はがきによる事前申込制です。7月8日までにお申し込みください。宛先など詳細はこちらのページにあります。

高崎市美術館



日時:2018年8月4日(土)14:00~16:00
会場:高崎シティギャラリーコアホール(群馬県高崎市高松町35-1)
定員:300名

実際の会場は高崎市美術館から徒歩10分離れた高崎シティギャラリーです。お間違いなく。福岡会場(小倉)でも原画展の会場とトークショーの会場が違うことを認識しておられない方がいて、急いで移動してました。高崎市美術館から高崎シティギャラリーの地図

なお、「萩尾望都SF原画展」群馬会場は2018年7月14日(土)~9月9日(日)の開催となります。

2018.05.18 13:47 | イベント

岩手県立博物館の特別講演会「ポーの一族の世界―漫画の魅力―」レポート

2018年4月22日、岩手県立博物館で萩尾望都先生の特別講演会「ポーの一族の世界―漫画の魅力―」が開かれました。当日私は行けなかったのですが、レポートや写真を送ってくださったファンの方がいらしたので掲載させていただきます(写真とレポートは別々の方です)。

この講演会は被災した陸前高田市立博物館のコレクションの中に漫画の雑誌があり、その時代に生きた人々にとって、 過去と未来をつなぐ重要な役割を果たした漫画の持つ魅力を、萩尾望都先生が「ポーの一族」を通して講演してもらうというものだそうです。


パーフェクトセレクション看板
Perfect Selection看板
特別展のリーフレット裏面
特別展のリーフレット裏面
講演開始前の会場スクリーン講演開始前の会場スクリーン

プロジェクターにうつされた絵について、内山博子女子美教授が質問して萩尾先生が答える形式。「県博日曜講座」の一環で、博物館長はじめ学芸員の方々も臨席しており、萩尾先生の作品に初めて触れる人がいることも考慮していた。講義の参加者は全国から集まっている。

陸前高田の被災した博物館では、ひとりの学芸員が漫画は将来、浮世絵のように価値あるものとして扱われるからと、雑誌の創刊号から多数収蔵していた。しかし被災し、その学芸員も亡くなり、収蔵品も多数流出したが、現在県博で修復作業を進めている。

修復が必要な収蔵品は数十万点で、まだ半数以上が残っている。萩尾先生は、前日に達増岩手県知事とともに修復工程の見学をされた。和紙に墨で書かれたものと違い、漫画雑誌のもろい紙質とインクは修復するのが非常に困難。それを試行錯誤しながら塩分を抜き、たんぱく質を抜き...という何工程にもわたる作業の様子をご覧になり、大変感銘を受けられたご様子。また先生は、初めてお知りになった達増知事の漫画好きな面にも触れられた。


展示されている予告カットの複製は16点。コミックス第1巻カバーにもなっているカラー、「メリーベルと銀のばら」連載開始の予告、「ポーの一族」最終回予告など。「返却希望」という先生の手書き文字も見えるが、当時はそうに書いてあっても行方不明になってしまうことがあった。当時、予告カットはすべてご自身で描かれていた。第1巻カバーにした絵は予告カットを描き直したものかもしれない。メリーベルを失敗したので切り貼りした。よく見ると塗りが違うのがわかる。
「ポーの一族」の最終回予告を描いた日付は1972.9.7。「メリーベルと銀のばら」連載開始予告を描いたのは1972.9.9で、随分近接なことに教授はじめ一同驚く。


○「ポーの一族」新作を描いたことについて
これまでにも新たな話は生まれてきていたが、昔とは絵が変わってしまっているので、今の絵で描くのは無理だと思っていた。しかし60歳を過ぎ、絵の違いを指摘されても「もう年だから許して」って言えると思い、描くことにした。
※「ポーの一族」の世界観を紹介するため、Mizuho Shoji氏作のチャートが紹介される。広く複雑な世界観に一同感嘆。

○「ポーの一族」を描かれた、そもそものきっかけは?
ファッションの学校で服飾史を勉強していて18~19世紀のマントをまとった人物を見た時、これは吸血鬼かも?とふと思った。怖いのは苦手だが、吸血鬼もので美しい作品を1本だけ知っていた。石森章太郎(当時)の「きりとばらとほしと」怖くない吸血鬼なら描けるんじゃないかと思った。

○名前の由来
エドガー・アラン・ポーが好きだったのでそこから。

モンスターとは、世の流れについていけない、除外された側の存在なのだと思った。自分も、除外された側にいた。
世の流れの中ではお邪魔だけど、でもいる。いさせてほしい。そんな存在について描きたかった。清く正しく美しく生きたいが、そうできない言い訳、コンプレックス。世の中にある強引さと正義、きれいごとのフレーズ。でも現実はそうじゃない。不条理や不信について考える。そうしていると話が降りてくる。ずーっと、世界の整合性を取り戻すために考えているのかもしれない。博物館に似ている。自分にとってもバランスのとれた物語を取り戻すため。物語がないとどこかへ行ってしまう。

○なぜ漫画なのか?
小説も漫画もたくさん読んでいたが、漫画から入ってくるものはリズムが違って音楽的だった。手塚治虫の「新選組」を読んだ後、その話の後のこととかをずっと考え続けていた。そのことしか考えられず、それを止めるために、自分が漫画家になるしかないと思った。それまでも、漫画は好きで描いてはいたが、「出会ってしまった」という感じ。

○登場人物の名前はどのようにつけられるのか
メリーベルは、かわいい感じの「メリー」に、美しい感じの「ベル」を足した。うまくいく時は、顔と名前とが同時に出てくる。キリヤとか。顔を描くと性格が決まる。話を作る中で性格が変わっていって、主人公の顔が変わることもある。

●「ポーの一族」
○1ページ目
霧の中のバラ → はっきり見えてくる → 人物が見える。読者が「誰?」と思う。幻想的に始まり、人物がアップになったら、わき役になったバラは黒く描かれる。目立つ必要がないから。線が多いと読者の目がとまる。あまりとどめてほしくない時は、あまり描かない。このページで、人物、名前、人物たちの関係を出している。(最初の人物の名前がエドガー。呼んだ人が母)

○2ページ目
1ページ目で名前の出たもう1人が登場。(メリーベル)ここを出て行くこと、2人が兄妹だということ、兄の癖がわかるセリフ。

○3ページ目
横長のコマが続く。村人、この先のこと、流れを表現している。横長のコマは、時間経過を読者が意識する。はみ出しは、少年漫画には少なく、少女漫画に多い。

○扉
主人公ふたり。遠くに行く馬車。霧。風。未知の世界へ。

○ホテルに登場のシーン
この人たち(主人公たち)が誰かを解き明かす。クリフォードをはじめに出しておき、メリーベルが倒れたところでクローズアップ。シーラのドレスは、1870年代から流行したバッスル・スタイル。服を考えるのは楽しかった。
エドガーと父との間の怒りがだんだん高まっていく様子を表す、怒りのスラッシュ。

○エドガーとアランとの出会いのシーン
アランの血をなめ、味見している。アランが馬のところへ行き、2人の間に距離ができる。アランが名乗るが、名乗るシーンというのは好き。


●「メリーベルと銀のばら」
○村で亡くなった女性の遺体に杭を打つのをエドガーが目撃して悲鳴を上げるシーン。
コマをまたいでのスラッシュ。邪魔にならず、効果的になるように。

連れてこられたシーラは詳細を知らない。男爵とずっと一緒にいられる方法としか知らない。

○儀式のシーン
皆の目がシーラの首に注がれ、吸うシーンは出していないが、"それ"を見たエドガーが音を立てる。という表現。

○キング・ポーがエドガーを仲間にするシーン
両手首をつかまえたキング。気を失うエドガー。円のかたちが続き、巻き込まれるイメージ。

○雑誌掲載時と単行本との違い
雑誌はページ数が決まっているので、それに収まるようにコマを削る。削った所は単行本で復活させる。当時は切り貼りをした。今ならパソコンを使うだろう。どこにどう復活させるかというのは、ネームが残っているからわかる。

例(雑誌のページと単行本のページを並べて比較)
ユーシスの死を、オズワルドが目撃してエドガーの故意と誤解するシーン。それをメリーベルに話すシーン。

●「小鳥の巣」
ヘルマン・ヘッセが好きで、ドイツを舞台に何か描きたかった。タイトルはすぐに出た。安全な巣の中に、ヒナを狙ってまがまがしいものがやってくるイメージ。

アランが手のかかる奴だということを表すために、靴ひもを直すシーンをさりげなく描いたら、思いがけずウケた。
宝塚版にはそのシーンがなく、残念がる感想が出ていた。エドガーの役者さんがご自分の靴ひもを直していらした。(これは笑いのエピソード紹介でした)

中州の学校が舞台。福岡や大阪には有名な中島、中州があるが、中州が好き。橋がないと行けず、事件が起きそうな感じがある。


○「ランプトンは語る」の二色刷りページ
カラー印刷は三色刷りだが、編集部にお金がない時には二色刷りになっていた。どの2色を選んでもよかった(黄色と青とを選ぶ人もいた)。カラーで色を決めるのが苦手なので、二色刷りは安心だった。まず、黒にする所と赤にする所とを決める。バランスを取りやすい。

○「小鳥の巣」の、エドガーが一人で布を開いて立っているような扉絵。
学校にまがまがしいものがきた、というイメージ。布のしわは使いでがある。人物の気持ちや、場面の雰囲気を出すのに使える。

○道具について
デビュー以来ずっと使っているベタ用の面相筆。面相筆は、先を少し焼いてから使う。丸ペン、Gペン。軸に滑り止めのテープ。開明墨液。墨は完全に乾くと溶けないので残るからいい、と初めの修復の話もひとこと。ミスノンW-20。早く乾く。太い線に使う。 細い線には別のホワイト。115~125のケント紙。昔はもっと薄いケント紙だったので、消しゴムをかけるとしわになった。

○「ランプトンは語る」のカラー扉
画用紙にサクラマット水彩、ホルベインを使用。ぼんやりした感じを出したかったので、鉛筆の線を残したまま彩色。通常、カラーには下絵1日、輪郭1日...とかかるが、これは全3日で描いた。輪郭と彩色に1日、仕上げに1日。

○スランプは?
スランプは、4年に一度くる。手塚治虫もそうだったと、高校生の時に聞いた。疲労がたまるとか、描いているものに飽きるとか、他が見つからないとか...。うまくいけば休みを3か月もらって旅行に行くとかする。駄目だと仕方なくほそぼそと描いている。でも、わりと休みをもらえる。充電ともいえる。
スランプになるとテンションが落ちる。マイナス思考になる。「だめだ~」となる。休むと、休んでいる状態に飽きて描きたくなる。休むと、同じものを見ても新鮮に見えて、頭もさえる。ストーリーがわく。

○今日持ってきた、記念撮影用の看板
「萩尾望都パーフェクト・セレクション」発売の時に編集部が作ったものを、もらって家で保管していた看板。バックの花は椿。大島椿は一重だが、一重の椿は世界的に見ると珍しい。だから外国の椿を描く時には八重で描く。外国を舞台に描く時は、そこの植生も調べて描く。パリにヤシの木が生えていたらおかしいでしょ?(笑)

○これからも「ポーの一族」を?
既出のストーリーの間を埋めるストーリーを、今後も描いていく。ただ、腱鞘炎で、1日2枚しか描けない。

●質問コーナー

○構図のとり方のアドバイス
映画が好きだが、好きなシーンや場面転換を覚えておいて使ってみる。小説を読んで、コマで描いたらどうなるか、頭の中でアタリをつける。オーソドックスな構図の漫画家>横山光輝、ちばてつや、わたなべまさこ。ていねいに人物、背景、場面の移動をちゃんと描いている。

○最近のおすすめの小説
「刑事ヴァランダー」シリーズ(スウェーデンの故ヘニング・マンケル著)。オススメの小説を聞かれたあときにお客さんが引いてしまうのでSFをあげるなと言われているが、ミエヴィルの作品。「都市と都市」「言語都市」など。

○アランのハチミツ好きという新たな設定にはどんな意味が?
彼らの食べた物はどこへ行くのだろう?とか、具体的なことを考えたりする。血の味を美味しいというからには味覚の嗜好があるのだろうと思い、味覚の嗜好を作った。


また、本講演については、こちらのブログが詳しいレポートをあげておられます。→『ポーの一族の世界 漫画の魅力』の講演会(あしたの糧)

2018.04.29 0:41 | イベント

北九州国際会議場で行われた萩尾望都トークショー&萩尾望都×松本零士対談のレポートです。

萩尾望都×松本零士トークショー2018年3月17日、萩尾望都SF原画展 福岡会場のオープンを記念して、萩尾望都×松本零士トークショーが開催されました。第一部は萩尾望都トークショーで、第二部が萩尾望都×松本零士対談です。

日時:2018年3月17日(土)14:00~16:00
 第1部:萩尾望都トークショー
 第2部:萩尾望都×松本零士 対談
会場:北九州国際会議場 メインホール(北九州市小倉北区浅野3-8-1)
定員:500名

司会進行は北九州漫画ミュージアム学芸員の石井茜さんです。
萩尾先生は春らしいピンクのジャケットをお召しになって、いつもながら素敵です。
第一部は石井さんの質問に萩尾先生が回答される形式でした。


昨日の原画展の内覧会をご覧になって、いかがでしたか?
→黒い壁と床になっていて、銀枠のフレームで飾られた原画が並んでいた。宇宙空間が広がっているようで、とても美しく、面白かった。

これまで北九州においでになったことは?
→親戚が小倉に住んでいるので、小学校の頃に来たことがある。雪の日に小倉のどこかの動物園に行った。雪の中で折りの中に座っているチータか何かの黄色い動物を見た記憶がある。

北九州国際会議場原画展は書籍「萩尾望都SFアートワークス」をベースにつくられているが、これが出版された経緯は?
→『S-Fマガジン』などに描いた未発表カットがたくさんあったので、そういうのをまとめて1冊の本に出来ないかと河出書房新社の穴沢さんという編集者が企画をもってきた。SFマンガたくさん描いてるから全部まとめて一冊の本にまとめたいということで、こうなった。

先生はこの本の作品のセレクトに加わってますか?
→これは全部穴沢さんがセレクトした。紛失した原画もありますので探すのを随時お願いして、穴沢さんが徹夜で編集したすごい力作。熱心な編集さんがいると作家冥利につきる。

本原画展の原画は400点余り。飾られている原画を見るとどれもたいへん美しく保存されているが、どのように保存していますか?
→二畳くらいの原画室があって、引き出しが並んでいて、そこに年代順に入れている。

たまにその引き出しをあけて原画を見たりしますか?
→描いたものは恥ずかしくて、なかなか見返すことがない。見ると「しまった、ここ少し塗るんだった」とか思ってしまう。

先生の作品を見てると、手を加える余地があるなんて、と思うが。
→同業の作家さんに話すと「昔の絵は描き直したいよね。」と言います。みんな似たようなことを思うんだなと。

「萩尾望都SFアートワークスは」初期作品から2000年代に至るまで網羅的に収録されていますが、先生のお気に入りのイラストはこの中にありますか?
イメージアルバム「百億の昼と千億の夜」:アルバム用に描いた阿修羅。光瀬先生の「百億の昼と千億の夜」という原作があって、阿修羅が象に囲まれるシーンを活版で描いた。

これはどのくらいの時間をかけて描いたのですか?
→3日か4日くらい。だいたい下絵に1日、ペンを描くのに1日、カラーに2日くらい。ちょっと細かいところがあるともう1日2日増えることもある。

「銀の三角」
「銀の三角」単行本用のもの。イメージしていた渋い色味で塗るのがうまく出せた。キャラクターのイメージがすごく好きだった。

画材は何を使ってますか?
サクラマット水彩ホルベイン絵具、時々水彩にカラーインクをちょっと混ぜて使っている。

マンガ用カラーインクって非常に光に弱くて色が飛びやすい。でも会場で見るとわかるけれど、先生の絵は全く損なわれていない。
→水彩は保存がいいみたい。

x+y「X+Y」
→背景はかなりカラーインクでやったんだけど、カラーインクに絵の具を混ぜている。細いフォワードの線が入ってるが、ゴムのインクに一時凝ったことがあり、ゴムの線で引いて、完成してから消しゴムを消すと白い線が浮かび上がってくる。放射線みたいな白い線に。本当は空気のないところでは何も見えないのですが。

「あぶない丘の家」
背中合わせで立っているもしくは座っている二人が空を見ているという構図が好きで、これはうまく出せた。他にも同じような構図で絵を描いている。


萩尾先生とSFとの出会いはいつ?
→手塚治虫「鉄腕アトム」。未来の動物、空飛ぶ車などいろいろなものが出てきておもしろかった。

SFマンガからSF文学へ変わったのは?
→マンガにしろ小説にしろ読むのが好きで、小学校の図書館に入り浸っていて、「十五少年漂流記」など世界文学全集を読みふけっていた。ある時SFの「世界文学全集」が購入されたので「月世界人」「タイムマシン」「地球最後の日」コナン・ドイル、ウェルズほかSFやミステリーなど読んでいた。

漫画家デビュー後、初期の頃からSFが感じられるが、意識していたか?
→ネタ帳があるが、その6~7割はSF。残りはファンタジー。足を地につけているというよりはちょっと浮ついた、未来や過去、異世界に魅かれていて、そういう話ばかり考えていた。

SFファンを増やそうと考えたことはないか?
→増やそうとは思わなかったが、SFを読んで欲しいが周りの人に聞くとSFは苦手だという人が結構いた。SFは好きな人は好きだけど、苦手な人に読んでもらうにはどうしたらいいんだろう?おもしろく書けばいいのかとは考えていた。

宇宙を描写するのに参考にするものはあるか?
→星座の本や宇宙の本を読むが、「スター・レッド」のときはマリナー1号・2号が火星に着陸した時に火星の写真集が出たので買った。石ころばかりだった。
宇宙空間に漂ってる小惑星の写真を見ていると、地球で見る岩と全然形が違う。無重力空間に浮かんでいるからか、岩が生き物みたいに不思議な形をしている。すごくおもしろかった。

生み出しやすかったキャラクターは?
→向こうから訪ねてきてくれるキャラクター。「ポーの一族」のエドガーなんかがすごくつくりやすかった。「スター・レッド」の星は編集が突然やってきて「おい、何か描いてくれ。3日後予告とりにくるから」「タイトル出してくれ」。その頃「スター・ウォーズ」が流行っていたので、とりあえず「スター」をつけたらかっこいいなと思ったので「スター・レッド」に。ちょうどその頃出版社のパーティで光瀬龍先生に会った。たまたま火星の話になった。光瀬先生が「赤い目で白い髪の火星人ってよくあるよね」と言われた。まさに私が描いているところだった。しまったと思った。光瀬先生とはシンクロすることが他にもあった。新大久保にグローブ座というシェイクスピアシアターがあって、劇場が宇宙に飛んでいき、中でシェイクスピアの芝居をするという変な話を考えていたら、光瀬先生も同じ話を考えていた、ということがあった。テレパシーかと。

他にも急に連載をと言われたことはないか?
→私は結構気が小さいので、連載でも読み切りでも、全部お話ができてから始める。これだけは予告から話をつくったから毎回冷汗ものだった。予告のイラストと本編が全然違うと言われた。

ほかにも生み出すのに苦労したり構成を考えるのが大変だった作品は?
→「バルバラ異界」は短期連載の予定で、1回目描いてると何か手応えが違う。うまくその異世界に入っていけない。月刊誌なので困った。次の回に何か落ちてこないかと思っていろいろとキャラクターを描いていた。するとキリヤという少年が現れて「僕はキリヤです。度会さんの息子です。」と言う。いやいや、度会さんの息子はタカという名前のはず。「違う。僕が度会さんの息子だ」と言う。そっちの方がおもしろいじゃんと思って話を切り替えた。こういうふうに話しかけてくれるキャラクターは本当にありがたい。

原画展で展示されている「11人いる!」のプロットは先生の頭の中を覗いているような気になる。プロットはどの段階で考えるのか?
→忘れた。編集の頭の中ではページ数が決まっているので、プロットの段階でこの話に何ページというのを決めてネームを切る=下絵を描く前に配分を全部考えて、それから描き始める。逆に絵がちゃんと浮かばないと、取りかかれない。

作品の中にはSF文学とのコラボレーションもある。光瀬龍「百億の昼と千億の夜」、ブラッドベリのシリーズ、野阿梓作品の挿絵など。こういう仕事で楽しくやりがいを感じられること。
→SF作品の一緒にお仕事させてもらって楽しかった。原作者と一緒にする仕事の楽しみは、自分の頭では考えつかないような世界が繰り広げられているから、違う世界が目の前に広がっていく。浮かんだ世界をどこまで描けるだろうという楽しみがある。野阿さんの作品は色気がある。色気をもらわなくてはと思う。

「ピアリス」のような小説も書いてるが、小説とマンガをつくる上で最も違う部分は
→私は頭に思い浮かんだ絵を描くのは得意だが、頭に思い浮かんだ絵を文章にするのがとても下手。なんて表すのかわからないということがある。

マンガ家を志したきっかけ
→手塚治虫の「新選組」を読んですごいショックを受けて頭から離れない。こんなに人を感動させるものがあるのかと。「新選組」は手塚作品の中で「火の鳥」「アドルフに告ぐ」といった代表作になるほどドラマチックな話ではない。でも思春期のある時期にちょうどスポンとはまってしまった、出会ったのだろう。自分もこんなふうに人を感動させる作品を描きたいから、マンガ家を目指してみようと本格的に投稿を始めた。高校3年生から。

その当時の福岡で先生に影響を与えたものは
→福岡には学校の図書館もあったし、映画館もたくさんあった。小学校の頃、父が映画館に連れていってくれて10円あれば1日いられた。画面が動いているのがとても楽しかった。

アニメーションも好きだったか?
→夏休みや冬休みには母の実家に行ったのですが、子どもたちに映画を見せてくれた。ディズニー映画「白雪姫」など。音楽と動く絵が印象に残ってる。

日本の映画・アニメーションで印象に残ってるものは?
→学校指定の映画鑑賞会があり、「ゲンと不動明王」「かあちゃんしぐのいやだ」(共に1961)など少し教育的な映画が学校で上映された。「ゲンと不動明王」で少年が奉公先でおねしょをしてしまう。自分で布団を干さなければいけない。教室に帰って感想を言うのだが「あの子は家を離れて一人になって寂しいからおねしょするんだね」と先生が話してくれた。

今後の活動について、こういうSFを描いてみたい、こんなSF小説をマンガ化してみたいなど。
→最近読んでおもしろかったSFは神戸でも言ったけどアン・レッキーの「叛逆航路」。新しいしっかりとした世界観があり、とてもおもしろかった。チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」「言語都市」新しい不思議なSFを書いているが、とても斬新。

時代ごとにSF小説のムーブメントは変わってきているのか?
→かわってきている。自分がSFを読み始めた60~70年代にはハインラインや小松左京らがいたが、SFは大航海時代のように宇宙に大航海していく話、宇宙人と戦ったり悪い奴をやっつけたり完全懲悪のようなイメージがあった。途中でフィリップ・K・ディックが出てきて地球の未来を書いている。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」で先のない地球、人間とアンドロイドの世界を描いた。最近のSFは宇宙人と地球人のコミュニケーションについて。「2001年宇宙の旅」もそうだったが、未来の時間で未来で待っているもの、将来の人たちと今の私たちはどのようにコンタクトをとるかというおもしろいテーマを書いている。

SFも社会を映す鏡なのか?
→そう。昔は王様がいて上意下達でみんなヒーローについていく構成の物語があったが、今その構成自体が古くて仲間同士でコミュニケーションをとっていく。

今から原画展をご覧になる方へのメッセージを
→400点ほど飾ってあってかなりたいへんだとうけど、写真のとれるフォトスポットに阿修羅がいたりするので、皆さんも楽しんで欲しい。

ここで第一部終了です。


地球魔ゾーンの宇宙人第二部は松本零士先生との対談です。
お二人は1979年に南米の旅をご一緒された間柄で、この時のお話は「地球魔ゾーンの宇宙人―アマゾン・インカ・ナスカ探険記」という本にまとめられています。リオデジャネイロからアマゾン、ペルーのマチュピチュとナスカ地上絵などまさに大冒険の旅でした。その時のお話が中心になるだろうとは思っていました。

同行者は松本零士先生、ちばてつや先生と萩尾望都先生、今里孝子さん(現・城章子マネージャー)、「宇宙戦艦ヤマト」森雪の声を担当した麻上洋子さん、ほかに男性4名の合計9名の大所帯ですね。

地球魔ゾーンの宇宙人裏表紙・マチュピチュでは麻上さんが上っていって、松本先生とちば先生が必死で追いかけていった。萩尾先生は怖くて根元にいた。
・アマゾンでピラニアを釣って刺身にして食べた。ワニも食べた。
・パリで合流してコンコルドに乗ってリオデジャネイロに向かう。北回りで行った。途中喜望峰で燃料補給した(これ、ダカールのことだと思います)。取材申し込みをしておいたのでコンコルドの操縦席に入り、漫画好きの機長と仲良くなってコンコルドを操縦させてもらった。機長が「墜落実験をやろう」と言い出して12,000フィートまで引き上げて6,000フィートまで急降下させた。席にもどっってちばてつや先生に「今、飛行機が揺れたろう」「うん、気流が悪いんだね」「あれは俺がやったんだ」トイレに行こうとすると「もう二度と行かせん!」と腕をつかまれてしまった。(→萩尾先生はこのお話初めて聞いたそうですが、松本零士先生は結構あちこちで話しています。)
・ナスカの地上絵の上を飛行機で飛んだ。直接地上に行って自由に歩き回れた。そういう何でも出来た時代だった。今はマチュピチュも上れないし、ナスカも立ち入り禁止。
・ミイラを見に行って写真を撮った。
・カリフォルニアの射撃場でピストルを撃った。みんなもうバンバン撃つが、萩尾先生だけじーっと焦点を合わせてから撃って命中したので優勝した。でも「そんなゆっくり撃ってたら殺されてるよ」と言われた。


お二人のやりとりでおもしろかった話をピックアップします。

(松本)「我々男が少女マンガ描いてたんですが、萩尾さんみたいな女性のマンガ家が登場すると、我々全員クビですよ」
(萩尾)「コラボでグッズをつくったのですが、メーテルの眼力に私のキャラクターが全滅しました」
(松本)「萩尾さんはいいね。なんと言ってもペンネームがいい。」(萩尾)「本名です。」


Q:松本先生は萩尾先生の作品の中で好きなものは?
A:絵がすごくきれい。物語の印象が残る。目的意識があって描いてる。それで大好きなんだよ。だから一緒にアマゾンに...(笑)

Q:萩尾先生にとって松本零士先生の作品の中で一番おもしろかったのは何か?
A:「男おいどん」「トラジマのミーめ」。松本あきら時代のSFに南極に置き去りにされた犬が宇宙人に連れ去られ、宇宙人になって、冷たい仕打ちをした地球人に復讐にやってくる。でもその犬の飼い主だった家の女の子だけ助けてあげようと連れてくる。でも女の子が言うんですよ...(ここで萩尾先生涙が出てきてしまい話がわかりません。どんなタイトルだったのでしょう)



質疑応答

Q:萩尾先生の一番古い記憶はどんな記憶ですか?
A:私の一番古い記憶は、大牟田の白川に住んでいた長屋で、窓の側に白い花がたくさん咲いていて、それがとてもきれいだった。その窓わくに這い上がろうと一生懸命だった。後で両親に「あれはどこ?」と聞いたら「お前が1歳まで住んでいた白川だよ」と言われたので、そうなのかと。

Q:「スター・レッド」の星は火星とエルグのどちらを愛していたのでしょうか?
A:両方おんなじくらい(これ、松本先生が答えてます)。後で萩尾先生が「両方愛していたと思います」と(笑)

Q:「ポーの一族」が宝塚で舞台化されたが、他にSF作品でミュージカル化して欲しいものはりますか?
A:やっていただけるものなら、何でも大丈夫です。

Q:「11人いる!」のキャラクターはどうやって思いついたのでしょうか?
A:魚や動物が好きで、魚で次第に性転換しているのがいるのを聞いていたけれど、それは魚だからと思っていた。するとアーシュラ・K.ルグウィンが「闇の左手」で性転換する人間を登場させたので、人間でもやっていいのだと思った。

Q:先生はSF小説をたくさん読まれていて、J.P.ホーガンの「星を継ぐもの」やラリー・ニーヴン「リングワールド」を漫画化してくれるとかはないんですか?
A:「リングワールド」はおもしろいですね。「星を継ぐもの」は星野(之宣)さんが描いてます。「リングワールド」の変な種族はすごい発想だと思いました。なかなかちょっと描く機会がないです。

Q:最後に。
A:松本先生が小倉で育ってどんな少年時代を送ったのか、なかなかこういうときがないと聞けないので、楽しかった。ありがとうございました。


萩尾先生のお言葉を一つでも聞き漏らすまいとしていた萩尾ファンはビックリしたでしょう。ほとんど松本零士先生お一人で話されていて、萩尾先生は絶妙に合いの手を入れる。司会の方も何とか軌道修正しようと途中まで頑張っていましたが...。それでわかりました。前半は萩尾先生のみ、後半松本先生とお二人で登壇された理由が。こうなることがわかっていたので、2時間全部お二人のトークショーにしてしまうと萩尾先生がお話しされる余地がない。遠くからきたファンはがっかりするだろうという、企画側のご配慮ではないかと思いました。でも松本先生はサービス精神が旺盛な方なので、ついついたくさん皆さんに話したくなるんですよね。楽しい対談でした。

2018.04.01 13:39 | イベント

7月から「萩尾望都SF原画展」が高崎で開催されます。

「萩尾望都SF原画展」が群馬県高崎市で開催されます。2018年7月14日(土)からです。高崎市美術館で開催されるそうです。

銀の三角Tシャツ会場:高崎市美術館(群馬県高崎市八島町110-27)
会期:2018年7月14日(土)~9月9日(日)
時間:10:00~18:00
入場料:一般600円 大高生300円
主催・問合せ:高崎市美術館

詳細はこちら:萩尾望都SF原画展・群馬会場
福岡会場から投入されたグッズもこちらで買えるといいですね。

2018.03.26 17:24 | イベント

岩手県立博物館で萩尾先生が「ポーの一族」について講演されます。

岩手県立博物館岩手県立博物館で萩尾望都先生の講演会が開かれます。女子美の内山先生が司会を務められます。

東日本大震災で被災し、現在は休館中の陸前高田市立博物館のコレクションの中に漫画の雑誌があったのですね。絵画や所蔵物の復旧作業は続いているようです。いつか再興できることを祈っています。

講演の詳細はこちら

特別講演会「ポーの一族の世界―漫画の魅力―」

日時:2018年4月22日(日)14:00~15:30
会場:岩手県立博物館(岩手県盛岡市上田字松屋敷34)アクセス方法
定員:140名
会費:無料
申し込み方法:往復葉書にて申し込み。4月6日必着。応募数が多い場合は抽選。

「被災した陸前高田市立博物館のコレクションの中に漫画の雑誌があります。その時代に生きた人々にとって、過去と未来をつなぐ重要な役割を果たした漫画の持つ魅力を、萩尾望都先生が「ポーの一族」を通して講演します。」

私は日程的に行けないので、どなたかレポートよろしくお願いいたします。

2018.03.21 13:25 | イベント

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